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番外編TIPS:冒険者の道具編:変動水銀


 バッカス王国で使われている金属の名称。水辺で採取出来る水銀ミスリルに竜種の骨粉等を混ぜて作成されたもので、込める魔力量によって「重量が増減する」という特質を備えている。


 材料が希少かつ高価であるため、広く使われてはいないが重量が増減する物質は様々な業界で注目されている。


 最も使われているのは世界開拓事業における対魔物戦闘。変動水銀を使った武器を運搬時と振りかぶっている時には最軽量のままで使い、敵に当てる瞬間に重量を増加させて威力を強化するという使われ方をしている。


 込める魔力は武器強化魔術に使っているものを利用すればいいため、変動水銀のためだけに余計な魔力を使う必要はない。


 増減する重量と増減速度は使い手によるが、運搬時の軽量化が出来るだけでも十分有用であろう。問題は作成コストの問題が解決されれば開拓初期の建材として利用される見込みである。ちなみに現在は変動水銀製の武器となると50センチほどの剣を作るだけで5000万はかかる。


 お値段以上の価値があるかどうかは意見がわかれるところで、金持ち冒険者でも「保険代を上回る装備とか有りえん」「使い潰せず立ち回りが限定される」と言う者もいれば「死ななきゃ安い」「安物使うから死ぬ」「死亡前提なのが甘い」と高価である事を容認する者もいる。


 アルゴ隊のイアソンは自分が使う装備に関しては安物派だが、仲間が使う装備に関しては質の良いものを使う事を求め、有用な新製品の情報は総長個人の情報網で小まめに仕入れて仲間に教えるようにしている。


 イアソンは概ねケチなので購入費用は仲間本人に出させるが、職人や商会相手への値引き交渉ぐらいは手伝っている。お決まりの値引き文句は「バッカス最強のアルゴ隊に装備使って貰えるとか超好機チャンスだよ?」というもの。実際、チャンスではあるのだが足元を見る発言である。


 巨人の少年に対しても「装備は自分で買えよ!」とのたまうイアソンだが、物の真贋に関しては同行して見極めるために口出ししている。


 なんやかんやで第三と第四試練を突破したアルゴ隊がカルヴァドスの森から首都に帰還した後も、次の試練が発表されるまでの休みに巨人の少年とイアソンは連れ立って出かけ、変動水銀製の武器をいくつか買い求めた。



「おい、そっちじゃない。まだ買い物してメシも食って帰るぞ」


「…………?」


 巨人の少年は頭に乗ったイアソンにチョチョイと髪の毛を引っ張られ、手綱のように操られるままに歩き進んだ。そして、子供が大勢いるところにたどり着いた。


「玩具屋だ! ぼくが買ってやるから、好きなやつを好きなだけ買っていいぞ♪」


「…………」


 イアソンは胸を張ってそう言ったが、少年はちょっと困った顔を浮かべざるを得なかった。促されるままに、遠慮気味に歩いたが、結局何も選べなかった。


 アルゴ隊の面々に遊んで貰う事はあっても、「玩具とは何か」「どんなものがいいのか」という事をそもそもよく理解していないかったのだ。


 そこまで考えが及ばなかったイアソンは、少年がたどたどしい言葉遣いで、申し訳なさそうに言うのを聞き、すっとんきょうな顔を浮かべていたが――。


「じゃあ……今日はぼくが選んでやる」


「そうちょ、が」


「色々買って帰ろう。そうだな……まずは、玩具を理解する事からだな」


「ゥ……ぼく、わあんなくえ……ごめ……」


「最初はそんなもんだ! お前はまだ若い、子供だからな。これから色々と覚えていけばいいんだ。最初は……わからなくて、怖いことに思えるかもしれないけどな。大丈夫だ。お前には、まだまだ先がある」


「ンー……」


 二人は玩具屋で色々と買い込み、大袋を下げて食事をして帰る事にした。帰る途中もイアソンが騒がしく、買い込んだ玩具の解説をしてくれるのを、少年はニコニコと笑いながら頷き、清聴した。


 その帰り際、同じく買い物をしていたカストルとポルックスとその家族と出くわした二人はしばし、立ち話をする事になった。


「そういや総長、今年こそ便箋用意しとけよ。弔魂祭のためにな」


「やだ」


「やだじゃねえだろ……。何で異世界人の俺らの方が郷に入ってるんだ?」


「お前らは好きに出せばいいだろっ。ぼくは……いやだっ!」


 少年は顔を見合わせて溜息をつくカストルとポルックスと、不機嫌そうにそっぽを向くイアソンが何の話をしているかわからず、不思議そうに見守っていた。




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