番外編TIPS:第一試練:ケートゥス
竜種。水棲の魔物。神がイアソン達に課した第一の試練。
親から生まれた当初は人間の手のひらほどの大きさであったが、毛糸ほどの太さの触手で掌握した液体を身体とする異能を持つ。
大海魔に似た能力だが大海魔を遥かに凌ぐ再生能力を持っており、シルエットこそ半透明の鯨の如きものになるが、全長は30キロと超特大。
親の体内にいる時点で神の要望を聞いた施術士により、救世主・最■■■■をモデルとする改造が施されている。オリジナルのような飛行能力を備える事は出来なかったが、水中で活動する魔物としては歴代のものと比べても指折りのもの。大海魔の完全上位互換である。
アルゴ隊とブロセリアンド士族を蹴散らした後、首都サングリアに向けて進発し、首都南の海上における大海戦の主軸を担う予定だった。
予定だった。
「なんかキターーーー!」
「殺せ殺せ!」
「ヒャッハー! 釣瓶打ちだぁ~~~~!」
神とケートゥスにとっての不幸は、うっかりケートゥスがブロセリアンド士族の巡航島の真下から現れてしまった事であった。
料理が出てきたら一口食べる前にお気に入りの調味料をぶっかけするという節操のない者が多いアルゴ隊はゲラゲラと笑いながら「敵だ~!」と叫び、島下のケートゥスに向けて回転装填式大弩による全力攻撃を敢行。
ブロセリアンド士族も冷静に「とりあえず攻撃で……」と士族戦士団と巡航島による攻撃を容赦なく行い、交戦開始から1分でケートゥスの核が消し飛び、巨体は単なる海水へと戻っていった。第一試練、死亡確認っ!
「いっぱい撃った」
「いっぱいでた!」
「何だったんだ? さっきのデカブツ」
「アレが第一試練だったんじゃね? ほら、一応は魔物っぽかったし」
「あんなアッサリ片付くような試練だけで終わるわけないじゃん! 相手はあの邪神だぞ。絶対その辺に同じの10体ぐらいいる。ぼくはくわしいんだ」
「みんな聞いて? いま総長がいいこと言った」
「珍しく良いこと言った!」
「だろ♪」
「仕方ねえ、周辺警戒するか。各自、適当に、早いもの勝ちー」
「「「「「うーい」」」」」
遠見の魔術で様子を見ていた神は絶句し、ケートゥスの後詰として一応用意していた第二試練まで見つかり、アルゴ隊が嬉々とした笑みを浮かべながら海上を走り、群がっていくところを見てお布団に逃げるのであった。
「馬鹿野郎! 馬鹿野郎お前、オレらを誰と心得る!」
「でゅくしwwでゅくしwww」
「アルゴ隊やぞwwwwバッカス最強の冒険者クランぞwwwwww」
「図体がデカイだけのヤツなんかな~! 瞬殺なんだぞwwwwww」
「「「「「ばーかwww」」」」」
神は三日三晩寝込んだ。