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番外編TIPS:魔物編:ネメアー

 バッカス冒険者を700名以上屠った魔物の名称。分類としては竜種なのだが、その誕生に関しては他の魔物と比べると特殊な経緯がある。


 単独で行動する魔物で、そのシルエットは獅子に酷似しているものの、体毛は黒に近く、多数の冒険者を屠るたびに返り血で赤黒く染まっていった。


 体長は5メートルほどで、対峙した腕利きの冒険者達は「一見すると、他の獅子型の魔物と大差無く、討伐は不可能ではないと思われた」と語っているが、討伐まで誰一人としてネメアーの毛皮を斬り裂く事は出来ず、多くの冒険者が前足の一撃で粉砕、あるいは鋭く太い牙で食い殺されながら赤々と照り輝く化物の瞳に見守られながら死亡する事となった。


 最初の犠牲者は確認出来ているもので別の魔物の討伐遠征に向かっていた30人の冒険者グループ。その30人が保険で戻ってきた事でネメアーの目撃情報がギルドに届き、直ちに200人規模の討伐隊を編成される事となった。


 そしてネメアーが隠れ潜むとされている都市郊外に派遣したが、一人の生還者も出す事なく、全滅に追い込まれている。荒ぶる魔物の追走により、逃走すら許されなかった。


 ネメアーは狡猾な魔物ではなく、ただひたすら自身の性能による正面突破ごりおしを行っており、斬られようが射られようが毛皮から毛の一本も落とさず、圧倒的な防護性能と腕利きの冒険者でも逃げ切れないほどの暴力的な移動速度で最初の討伐隊を始末した後も、多数の冒険者を殺し、犠牲者を増やしていった。


 事態を重く見たギルドはカンピドリオ士族戦士団に協力を要請し、精鋭500人が出動。


 一ヶ月に及ぶ大乱戦が展開し、その間にも応援が1000人以上追加投入されたものの、ネメアーの討伐はならないどころか弱らせる事すら出来なかったとされる。


 その大乱戦が展開された渓谷地帯では一帯が赤黒く染まり、血の河が流れるほどであった。その全ての血がカンピドリオ士族のもので、人狼による超再生戦術を退けたネメアーにより流されたものである。


 カンピドリオ士族は300名以上の保険帰還死亡者を出し、打開出来なかった事で一時撤退。カンピドリオ士族長の妻及び物見遊山で応援に来たアルゴ隊を加えた第三次討伐隊を編成し、討伐に向かった――が、その時にはもうネメアーは何者かに討伐されていた。


 残されていたのはネメアーの残骸であった。


 しゃぶり尽くされ歯型までついた骨が主に残っていたのみ。毛皮は剥がされ、他の部位が引きずられていった痕跡があり、アルゴ隊がそれを追跡。


 痕跡の終端にはネメアーの毛皮に包まって気持ちよさそうに眠る10歳にも満たない巨人の少年の姿が見つけられる事となった。その後、紆余曲折を経て少年はバッカス王国で保護され、ネメアーの毛皮は紡屋のテセウスの手によりタテガミと尻尾付きの着て戦える着ぐるみ寝袋にされる事となり、現在も巨人の少年が就寝時に愛用している。


 ただ、このネメアー討伐は後の戦い、エキドナ事変の幕開けに過ぎなかった。


 とある冒険者の英雄譚の始まりとして語られる討伐劇ではあったが、実態と結末は英雄譚とは呼び難い血に汚れた出来事であったは、ごく一部の関係者にしか知られていない。


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