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人財コンサルティング株式会社  作者: ねへほもん
5/9

第5話「材が罪になった日①」

「磯原食品工業」


そうか、俺の初仕事の相手と再会することになるとはな。

思い出したくもねぇが、特別に話すとしよう・・・


5年前、当時は設立3年目の新興コンサル会社だった「人材コンサルティング株式会社」に入社して2ヶ月が経った頃、初の大仕事が舞い込んできた。

ミッションは、「磯原食品工業」に対し、業務改革、人件費抑制に合った人事改革案を提示すること。実際に俺が改革案を作成し、人財からOKが出れば、そのまま当日のプレゼンまで担当するという重責だった。当時この会社が進めていた"AIのEye"プロジェクトの第1号案件でもあり、注目度は高かった。


"AIのEye"プロジェクト・・・それこそが、新興コンサル会社の一角に過ぎない俺の会社が中堅まで発展を遂げた原動力になったものだった。

SE(システムエンジニア)を多く擁していた俺の会社は、当時全く注目されていなかったAI(人工知能)に早くから着目し、データ分析ツールに取り入れて他社に売り込んでいた。そのうち「ビッグデータ」「将棋・囲碁のプロに勝利」「自動運転」と話題性を増すにつれ、うちのツールも飛ぶように売れた。

膨大なデータは人間の目では見切れないが、AIの分析眼を通して見ることで、データの全体像が浮かび上がってくる。それが"AIのEye"の由来らしい。

噂では"愛のEye"とする命名案もあったらしいが、AI要素が皆無だし、知的なイメージのわが社に合わないから却下されたらしい。そりゃそうだ。


社名の通り、人事系のコンサルを得意としていたうちは、まずAIを人事関係に導入することに着手した。

具体的には新卒採用に活用するというもので、以下のビジョンを持っていた。


1.就活生が提出したES(エントリーシート)をAIで分析し、会社が求める人物像に合う就活生を抜き出すツールを売り込む

2.就活情報サイト(〇〇ナビとか)と契約を結び、登録した学生の情報をAIで分析し、1で集めた会社データとマッチングすることで、各学生に合った企業を紹介する

3.オススメの企業を紹介してくれるという便利機能が学生に増え、学生の登録数が増える→学生の登録数が増えることで、求人を集めやすくなり、企業側の利便性が上がるため、ツールを導入する企業が増える→登録する企業が増えることで、学生側の利便性が上がり、より学生の登録数が増える→・・・と相乗効果でツールの利便性が格段に上がる


この壮大なビジョンの第一歩、つまり手順1の1社目に売り込もうとしていたのが「磯原食品工業」だったというわけだ。会社概要を説明すると、


・元々は老舗の豆腐屋

・外資系企業出身の磯原氏が3代目社長に就任した後に急成長

・今では豆腐に加え、豆乳を使用したケーキ屋、湯葉を取り入れた洋食レストラン、味噌Barなどを幅広くプロデュースし、大豆の活躍の幅を広げている

・キャッチコピーは「いそはらのイソフラボン」


磯原氏はうちの代表の知り合いで、大学でゼミの1年後輩だったらしい。

和の世界に留まりがちな大豆製品を、洋の世界に羽ばたかせた着眼点はまさに外資系の視点と言え、非常にやり手の社長だと感じた。

アイデアと営業力はピカイチだが、同時に自分には人事系等の管理業務は苦手という弱みを自覚している点も一流の証だった。そこで、大学のゼミの先輩であるうちの代表を頼り、会社の成長に合わせた人事制度の助言を受けようとしたというわけだ。


急成長により人手が必要になり、また会社の知名度が増したことで新卒採用応募者が増えてきたため、大量のESを見切れなくなったとのことで、"AIのEye"ツールの導入第1号としては最適な取引先だった。

そして、"AIのEye"ツールの導入と併せた人事制度の改革案を考えるというのが俺の役割だったわけだが、初仕事なだけあってなかなか難しい。


俺もあの頃は青かった。

「人財達を見返してやるぞ!」って毎日企業視察とアイデア考察とプレゼン資料の作成に明け暮れていたもんだ。

ようやく案がまとまったところで、人財に社内プレゼンをしたのだが、その話はまだ次だな。


もう定時だし帰るわー

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