15 紗百合と美紀
7月14日(土)
頭上には、雲一つない綺麗な青空の広がっていた。
そんな空には目も呉れず、私は黙々と歩き続ける。
隣で中川は、落ち着き無く建物を見渡していた。
私達2人が何故、何処に歩き続けているかと言うと
一昨日約束したテスト勉強をしに行くため、ケイの家に向かっているから。
本当は、昨日する約束だったが、急遽今日に変更されたのだ。
「…松崎さん。首…大丈夫?」
さっきまで、初めて見る景色に目を輝かせていた中川が
唐突に、心配そうな顔をして、私に話しかけてきた。
それに驚き、私は首を隠す様に右手を添える。
「えっ…あ…うん。お陰様で……。」
(うっ……。びっくりした。)
高鳴る心臓を意識しながら、私は昨日の出来事を思い出す。
昨日、朝倉先輩に胸ぐらを掴まれて
自分の重さ(重力)で窒息死しかけている時
屋上のドアが開いた。
鼻歌混じりで、中川が屋上にやって来たのだ。
そして、私が死にかけているのを見て
「きゃ~!何してんですか!死んでしまいますよコレ!!」
…そう、鬼の様に恐ろしい顔をしていた朝倉先輩に
躊躇なく話し掛けた。
何というか、驚いた。勇者だよ勇者。
中川には、恐怖心と言うのが無いのかもしれない。
…と、本気で思った。
言葉を理解した朝倉先輩は、私を掴んでいた手を離し
何もなかった様に、去っていった。
恐らく、あの時中川が屋上へ来なかったら
私は死んでいただろう。
感謝を込めながら、子供の様に燥ぐ中川を
見つめていると目があった。
私が戸惑い、目を逸らさないでいると
中川は無邪気な笑顔を浮かべた。
その顔を見て、私の心臓が跳ね上がる。
つい顔を逸らす。
中川は、悲しそうな表情で私を見続けている。
何かにショックを受けている様だ。
(あぁ…心臓に悪い。)
溜息を1つ吐き、私は前を向く。
すると、10m先の家からケイが出てきて
私達に手を振り出した。
それに気付き、一気に明るい表情に戻り
「あっ、白鷺洲さんだ~♪」
中川はそう嬉しそうに言うと、大きく手を振り返した。
私もケイに振り返す。
……その後、ケイの家に入り私達は
テスト勉強をしっかりやったのでした。




