14 手口
朝倉先輩の家に来たは良いもの、何度呼び鈴鳴らしても
出て来やしない。
私は溜息を1つ吐き、2階の窓を見る。
(隠れる気が無いね?窓から覗いてるの見えてるよ。)
呼ばれた理由が、これで分かった。
高みの見物する為に、アタシを呼び出すなんて…。
傘をたたみ、ドアノブに手を掛ける。
…うん。閉まってる。
分かってる。それくらい予想が付いてた。
そろそろ、家に入りたいので鍵穴を確認する。
(ダメだよ。ディスクシリンダー錠じゃ…。
ピッキング犯から見たら、玩具だよ♪)
ガチャリと音を立て、ドアの鍵は
アタシの侵入を許した。
「お邪魔しまぁ~す。あれ?先輩居ないのかなぁ?」
私は部屋から出て、玄関へ足を運んだ。
「いらっしゃい。…鍵締まってなかった?」
「……いいえ?」
私と比べると劣るが、可愛らしい瞳を丸くして、頭を傾けた。
…おっと。無意識に爪を噛んでいた。
「あの朝倉先輩。家に来ましたが、何をすれば良いのでしょう?」
「あ…あぁ、お茶出すからまずはこっち来て。」
私は心の中で溜息を吐きながら、部屋に案内をした。
部屋に案内をした後、白鷺洲を置いてキッチンに行き
お茶を用意して戻った。
(あぁ私は何で、こんな事をしているのだろうか?)
そう、自分が情けなく思いながらも
(私のミスだし、今日は諦めよう…。)
そう思った。
朝倉先輩は、惚けたアタシを見て
爪を噛んでいた。
しかし敵意はそれだけで
アタシを普通に部屋に入れ1人にした。
(あぁ〜。先輩ダメでしょ、敵にスキを見せちゃ)
そう呆れながら、アタシはパソコンの電源を入れる。
そして、昨日ケイが見たパスワードを入力する。
(ケイは覚えて無くても、
アタシは、何時でも思い出せるからね〜♪
さて隠しフォルダーは?…っと。)
直ぐに見つけ出し、フォルダーを右クリックする。
隠しフォルダー作るのは良いけど
全部そこに、まとめるのダメだよねぇ。
脅しに使うデータは、全て完全消去して
電源を消した。
(う〜ん。簡単過ぎて、つまんない〜。)
お茶を楽しみながら、私達は
18時まで喋り続けた。
初めて、人と喋るのって楽しいと思った。
白鷺洲は、私の目を見て
私の話に合わせて頷いたり
共感してくれた。
…仲間なのかな?
もう少し一緒にいたいな…。と、思うくらい
相槌が上手かった。
(今まで、こんなに気持ちよく話せた事無かったな…。)
私は今日のストレスを全て忘れ、気持ちよく
白鷺洲を送る事が出来た。
今度は唯友達として、家に呼ぼうかな?
そう考え、パソコンの電源を付けた。
パソコンの隠しフォルダーをクリックする。
「何これ!?…ははっ……マジかぁ~。」
私は頭を抱えて、深い溜息を吐いた。
…見事にそのデータだけが、全て完全に消されていた。
部屋に1人にしたのは、たった5分弱。
その、お茶を入れて持ってくる、僅かな時間で
35文字のパスワードを解いて、データを消したみたいだが…。
(…なんでだろう。)
自然と許せちゃった。
ムカつかなかった。
消してもらえて逆にスッキリした。
…清々しいほど、鮮やかな手口でした。
そう思い、私は天井を、力なく見ながら微笑んだ。