9 私の人生 中編
中学に入り、初めて本当の友達が出来た。
同じ小学校出身の人が居ないそこで
私は学校の楽しさを味わった。
そして、小学校での嫌な記憶は、日々忘れていった。
第一希望の高校に受かり
素敵な高校生活を送れると思っていた。
だから、同じクラスに朝倉さんが居たとしても
気にもしなかった。
新しい友達もでき、高校生活も順調に過してた。
…入学式から約2ヶ月後、ある事件があるまでは…。
私はある先輩に恋をして、見ているのでは満足できず
放課後、隠れてその先輩の体操服を物色した。
「はぁ…先輩の体操服…。」
(…確か今日の6限は体育だったはず……。)
体操服を鼻に押し当て、匂いを嗅いだ。
カシャリと、乾いた音が教室に鳴り響いた。
「みぃ~ちゃった~♪」
声の方に振り返ると、朝倉さんが真顔で扉の前に立っていた。
手にはスマホが握られていた。
「…え?写真撮った?」
動揺する私を見て、ニッコリと笑みを浮かべた。
全身の血が引いていくのが分かる。
(どうしよう?どうしよう!?…どうしよう!?)
「…他の皆には内緒にしてあげるよ?」
「え…本当?!」
「私の召使になればね。もちろん断れないよね?
そこまでバカじゃないでしょ?」
…そう。断る選択肢は無かった。
ちょっとした出来心で、私の人生はまたドン底に落ちた。
朝倉さんの召使となった私は、友達とも遊ぶ時間も無くなり
友達も私から離れていった。
お金も無くなって、バイトをしても直ぐに無くなる。
もう嫌だ…。
朝倉の奴隷みたいに生きるのは。
あんな奴に、人生を滅茶苦茶にされるのは…。
学校を早退して、何時の間にか寝ていた様だ。
私は暗い部屋の中、1人蹲る様に座りながら寝ていた様だ。
耳を澄ます。
…雨の音が聞こえる…。
ボケっとして窓の外を見る。
すると、赤い傘を持った赤い服を着た人が、家の前に止まった。
…お客さんかな…?
今は家には、私以外いない。
階段を降り玄関に前に立つと、丁度呼び鈴が鳴った。
ドアを少し開け、外を窺いながら尋ねる。
「…はい。どちら様ですか…?」
「…初めまして八重崎先輩…。白鷺洲です。」
「白鷺洲さん!?どうしてここに…!!」
(…最近、朝倉が目の敵にしてる子だ…!)
何されるか分からないので怖いから家に戻りたい。
だけど、雨の中わざわざ来てくれたのに
話を聞かず、追い返す何て真似は出来なかった。
私は少し警戒をしながら、白鷺洲さんの話を聞く。
…しかし、警戒をするのは直ぐに止めた。
「…実は、お願いしたい事があって…。
朝倉先輩に嫌がらせを受けていて…その友達である
八重崎さんに止めて欲しいのです…。」
そう言うと、白鷺洲さんは俯き体を震わせた。
目から時折雫が落ちる。
(……!!)
胸が痛んだ。…仲間がいたんだ。苦しんでいる…。
見捨てる訳にはいけない…でも私には助ける力が無い…。
自分の無力さに自己嫌悪しながら
「…ごめんなさい。私には何も出来ないの…。」
そう言い、私も俯いた。
「…もしかして…。八重崎先輩も弱みを握られているの?」
白鷺洲さんの言葉に、私は目を見開いた。
「…え?……貴方も?」
真っ直ぐ私を見つめながら、白鷺洲さんは静かに頷いた。
「はい…だから1人じゃ何も……へくちゅっ!!」
白鷺洲さんのクシャミに、外が雨だという事を思い出す。
「あ…ごめんね。寒いよね。」
「あ…いえ。先輩も寒いですよね…すいません雨の日に…。」
「ううん。コチラこそごめんね。さあ、家に入って。」
家に来た時は、あんなに警戒していたと言うのに
何時の間にか、私は彼女のことを信用し、家に招き入れたのでした。




