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桑の実をジャムにして…  作者: 花好 モピナ
第2章  人格破壊編
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5 鳴かぬなら

4限目の自習、ケイは手紙を読み初めた。


楽しそうに読む姿を見て、しゃくさわる。

俺以外の人間と、仲良くしてるだけでムカつくのに

ましてや男にモテるなんて不快だ。


一層いっそうの事、閉じ込めてやろうと思うのは

…これで何回目だろう?



ケイと目が合った。

俺に気づき、ケイはあわてて顔をらす。

ケイが悩み事がある時や、隠し事があるときに良くやる仕草だ。


ケイは落ち着きがなく、何だかソワソワしてる。


俺はケイの所に歩み寄り、なるべく明るく話しかける。

そして、ねぎらいの言葉の後に

気になっていた手紙について、ストレートに尋ねた。


「やっぱり女子からだったよ。相談があるんだって。」


…本当に女子からの手紙だったのか?


ケイの顔からは偽りを感じられない。

そうか、女子からか。

女子からと聞いて、少しは楽になったが、安心出来ない。

いつでも護れるように、その場に駆けつけられるように

えず、待ち合わせ場所だけでも聞いとこう。


「えと…明日放課後お…」


話の途中で、ケイは一時停止した。

何を言うか、何を言わないか迷ってるようだ。

何時いつもなら聞けば、何もかくさず言うはずなのに…


ケイは目を横にそらしながら「お菓子」がとか

意味の分からない事を言い出した。

彼女自身も、なぜ「お菓子」と言う単語を、言い出したか分からない様子。

視線が泳いでいるのが分かる。


この手紙が、口止めさせているのか…。

ならばうばい取れば容易たやすいだろう。


(鳴かぬなら、殺してしまえ、ホトトギス)


今なら、この言葉の意味が今なら分かる気がする。

手紙に手を伸ばす。


ケイは、それに気付き隠してしまった。


「この手紙は紗百合の後輩のカリ…じゃなくて

女の子からで、私に相談したいんだって。

恥しいから、1人で来てって。

だからソラ君でも、場所を教える訳にはいかないの。」


(…おしい。手紙も取れなかったし。)


「紗百合の後輩のカリ…」とか、後もう少しで名前が分かったのに

彼女も必死に言葉をにごした。


名前も内容も教えられないなら、着いていこうと思う。

それを伝えるとケイはうつむき、こうつぶいた


「…ソラ君のバカ…。」


声をいてケイが泣いてることに気付いた。

こういう時、かける言葉が見つからない自分が嫌になった。


なぜケイは泣いているのだろう?

何か言葉を間違えて、傷付けてしまったのだろう。

それすらも理解できない。

…彼女の事をなぐさめれる様になりたい。

と、最近良く考える様になったのだが……。


ケイはチャイムと同時に、教室から飛び出して行ってしまった。


担任に聞くと、そのまま家に帰ったらしい。

結局俺は、ケイを護るどころか傷付けたまま、何も出来なかった。


…だが、凹んでいても仕方ない。

真相しんそうを確かめなくては…。

放課後家に寄っていこう。



まずは情報じょうほうを集め状況を、見極める事から始めよう。

…だが、情報が少なすぎる。

さゆりって誰だ?さゆりの後輩のカリ…の存在が気になるな


「おい相野谷あいのや。」


後から声を掛けられ、後ろにり返る。

そこには、言葉使いの悪そうな女が立っていた。

…なんかムカつく。

俺の直感が、コイツを拒否きょひする。


「ケイが何故なぜ早退したか、知ってるか?」


…うん、その女は見た目通り言葉使いの悪い女だった。

うん、よく見るとソイツは松崎だった。


「…あぁ、頭痛らしいな。」


ケイは、先生にそういう風に伝えたようだ。


「…ふ~ん。」


話を聞くなり、スマホを取り出しいじり出した。


(話はまだ終わってねぇんだよ。)


本当にコイツは一々癪に障る。


おさえろ俺。

平常心を保て。

俺は、成るべく笑顔にたもち、たずねる。


「松崎、さゆりって誰だか知ってるか?」


それを聞いて、スマホを弄る松崎の手が一瞬止まった気がした。


「お前、ふざけてんの?」


「あ?何言ってんだ?真剣に聞いてるんだけど」


松崎はスマホの電源を切り、こちらに振り向いた。


「それ、私だから。」


「…は?」


あまりの展開に、思考が止まった俺に

松崎は舌打ちをした。


「私松崎まつざき 紗百合さゆり

人の名前忘れるなんて酷いな~相澤あいざわくん。」


「相野谷だけど…。」


「…で、私に何か用?」


(あ、聞こえなかった事にされた。)



「…ひまじゃ無いんだけど?」


そう言って、松崎はうでを組み

するどい目で、俺を見下すように目を合わせた。

…何でコイツ、こんなにえらそうなの?

いや、イラつきで目的を忘れてはいけない。


「…松崎の後輩で、カリ…がつく名前の奴教えて。」


「いないよ。」


即答そくとうだった。


…もう少しくらい考えた方が良いのではないか?

カリ…がつく名前の子が、もし居たら泣くぞ?



「…本当に居ないのか?」


コイツにちゃんと話が通じてたか不安になったので、もう一度聞く。

すると松崎は、表情で「不快感ふゆかいだ。」と、表明ひょうめいさせる。


「いないよ。何疑ってんの?一応部長候補よ私、

名前くらい覚えているわよ。」


「そうか…。ありがとう松崎。」


「はいよ~。」


松崎は手を、上でりながら去っていった。



…うん。

ケイは100%、手紙にだまされている。

恐らく女子・・と言うのと、内容が相談・・と言うのは

手紙の主の出鱈目でたらめ…又は、でっち上げだろう。


こんな事が、また起こるかも知れないし

そろそろGPSとか買ってみようかな。


…さて、コレからどう動こうか。

2年3組 松崎まつざき 紗百合さゆり

ケイの親友。

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