21 紗百合と美紀
私はケイとは別行動をしている。
現在、中川と水族館を歩いているのだが…。
(何んだろう、この気持ち…。)
私は右手を胸に当て、心臓の動きを感じる。
あの戦いを見てから、私の体の調子が変なのである。
「松崎さん!あの魚、鯛ですよ!」
「…え、あぁ…うん。」
中川は魚を指差しながら、目を輝かせる。
水槽をじっと見ていた中川が、いきなり振り向くものだから
私は驚いてしまったのだろう。
やっと落ち着いてきていた鼓動が、また激しく動き出した。
「美味しそうだねぇ~」
私の素っ気ない返事なぞ気にせず
中川はニコニコしながら水槽に顔を向ける。
子供の様に魚を見ては楽しげに笑う中川を、横目で見る。
何故か目が離せない。
気になる。
と…そんな状況がずっと続いていた。
暫くそうしている内に、中川はお腹をさすりながら
私に上目遣いで見つめてきた。
「…お腹すいちゃった……。」
そう言ってから、私の服の袖を引っ張り
歩き出した。
意味の分からない行動に、私は戸惑いを覚えながら
素直に付いて行く。
何時もだったら、手を引き剥がし
チョップをお見舞いしてやるのに。
今日は何故か出来なかった。
逆に、中川に振り回されるのが嬉しく思えてしまって
自分でも驚いたのであった。




