8 風呂上り
風呂を出てすぐ、俺と中川の部屋に来客が訪れた。
ドアを開けると、ケイと松崎だと確認し部屋に入れる。
中川はトランプを持ちながら、嬉しそうに笑った。
「いらっしゃい松崎さん、白鷺洲さん♪」
「お邪魔します中川君、ソラ君」
慣れない浴衣に、はにかむケイの
髪はまだ乾ききっておらず、しっとりとしている。
赤み掛かった艷やかな素肌…。
俺は思わず、色っぽいケイに見とれていると、松崎が俺の浴衣の裾を引いた。
「…なんだ?」
目の保養時間を邪魔されて、少しイラつきながら松崎を見る。
松崎を睨み付けていたと思うが、松崎は気にする素振りを見せず
真剣な顔で、俺の目を真っ直ぐ見ていた。
「おい、お前来い。」
(…仕方ないな…。くだらない話だったら殺してやりたい。)
そう考えながら、ババ抜きを始めた2人を置いて部屋を出る。
廊下に出て暫く歩き、人気のない所で松崎は足を止めた。
さっきと同じ、真剣な顔立ちで腕を組みながら、こちらに振り返る。
「さっき風呂場前で、キモイ男3人組が
こっちを見て笑っていたんだが…。」
「ん?そうなんだ。」
「女の勘なのだが…多分奴ら、ケイを見てた。」
(コイツに女の勘ってあるのか?)と思いながらも口には出さず。
「…そうか。」
まあ、ケイの事だし色んな奴らに目を付けられる事は予想出来る。
俺はそう考えながら左手で頭をかく。
(広い男になるのは、もう少し先になりそうだな。)
溜息を吐く俺を見ながら、松崎は話を続けた。
「明日は1日班で自由行動だろ?
せめて明日はずっとケイのそばにいて欲しい。」
出来れば俺もそうしていたいが、中々出来そうにない。
修学旅行で浮かれた奴らが沢山いるからだ。
俺も浮かれた1人で修学旅行中も、ずっとケイと2人きりで居たかったのだが
残念な事に、女子達も浮かれて何かと俺に話しかけてくる。
本当はモテない男に生まれてきたかったが、もしモテなかったら
ケイと恋人になれるかと聞かれると、自信がない。
まあ、俺の事だから強制的にでも、ケイと恋人になると思うが…。
「ずっと、そばに居たいんだけどな…。」
中々出来ないから最近の悩みの種になっている。
俺は又、大きな溜息を一つ吐き、頭をかく。
あぁ、禿げそうだ。
「言っとくけど、女子に絡まれてたら、直ぐ私達は移動するからな。」
「あぁ、分かってる…ハァ。」
「酷い目にあったんだからな?!本当最悪だったわ!!」
松崎は何かを思い出したかの様に、物凄く嫌そうな顔をしている。
一体何があったんだか…俺の知らない内に。
まぁ、ケイが酷い目に遭っていないならイイや。
「あぁ、明日も直ぐ抜け出せるように頑張るよ。」
「分かったらいいわ。さ…帰りましょ?」
ケイと一緒に修学旅行が楽しめるのは嬉しいが
それさえ出来ない明日が来るかもと、考えると気が重く感じた。
「はぁ…。」
「相野谷くん、ため息を吐くと幸せが逃げちゃうぞ」
部屋に戻る途中
後ろから女の子みたいに高い声で、声を掛けられた。
それを聞いて、俺がまた溜息を吐いたので、中川は頬を膨らませる。
「中川…何で…ここにいるんだ?何しに…」
俺は中川に尋ねながら振り返りったとき、ある事に気が付いた。
そして、思った事を頬を膨らませたままの、中川に質問する。
「…ケイはどうした?」




