6 ホテルに着きました~。
私達を乗せたバスは、ホテルの前で止まった。
ソラ君はバスに降りて直ぐ、体を伸ばしながら大きなアクビをする。
約5時間くらい寝続けたはずなのに、眠そうだ。
「おはようソラ君」
「ん…おはよ…。」
それだけ酔い止めが効いたのだろうか?顔色が悪くない。
挨拶したら返事がちゃんと帰ってきたから、私は一安心した。
「おいケイ、デカくねぇか?このホテル!」
「相野谷くん、お腹すいてない?」
私は紗百合に相槌しながら辺りを見渡す。
吸い込まれるようにホテルに入っていく学生の中に、他校の制服も見えた。
入り口付近はまだ混雑しているようだから
もう少し待とう。そう考え、ソラ君達の方へ視線を戻した。
いつの間にか、ソラ君の周りには女子が。
同じクラスの女子生徒だったり、他クラスだったり
他校の女子生徒まで…約15人くらいの女子達が集まり
一斉にソラ君に話しかけている。
それを見て私が思った事は
(…こっちも混んでいるなぁ…。)
それだけ。
長い付き合いで結構なれているが。何ともシュールレアリスム。
その場にいると、私達の身の安全が保証できないので
中川君と小百合と目を合わせ、女子達に鬱陶しがっているソラ君を
放置してホテルへと向かった。
こういう時、変に女子達を追い払おうとは考えてはいけない。
そう結構前に、私達は学んでいたのであった。
「ねぇ、これから何をすればいいんだっけ?」
ホテルの中で、中川君は私達に尋ねた。
そして、私と紗百合の顔を交互に見て、頭を横に傾ける。
紗百合も先生の話を聞いていなかったらしく、お手上げポーズをした。
私は、バスを降りる前に先生が言っていたことを思い出す。
「えと…確か各部屋に荷物を置き、ホール集合だった気がする。」
「ありがとう白鷺洲さん!!」
そう笑顔で言って、中川君はエレベーターに向かって走りだす。
しかし直ぐ足を止めて、こちらに涙目で振り返る。
「209号室ってどこだっけ?」
「馬鹿だな~中川。209なんだから2階じゃないの?」
「そっか!」と納得する中川君に、誇らしげに胸を張る紗百合。
でも確か、2階はレストランじゃ…。
「馬鹿はお前だ松崎。」
後ろの声に驚き、私は振り返る。
そこには、髪型が乱れた顔色の悪いソラ君が立っていた。
奥の方では、大騒ぎをしている女子の軍団があった。
恐らく目を盗んで抜け出してきたのだろう。
しかし、あれからも女子が増え続け
30人以上と2倍にもなった女子の中から抜け出すなんて
ソラ君は実は忍者なんじゃないかと、たまに思う。
そんな想像している私の余所に、口論が始まる。
「はあ?じゃあ、お前は何階かわかってんのかよ?」
紗百合はソラ君を睨みつけながら尋ねる。
ソラ君は、そんな紗百合に見下しながら鼻で笑う。
「当たり前だ。松崎はしおり見たか?12pに載ってるぞ見取り図が。」
「あっ本当だ~!ありがとう相野谷くん6階だね♪」
中川君はキャリーバックを、その場の絨毯の上で開き、しおりを読んでいる。
それには私達も他の生徒達も驚いた。
中川君の荷物で、通りにくくなった廊下が混み始める。
私は急いで中川君の荷物を、ちゃんと入れてキャリーバックのチャックを閉める。
中川君は「ごめんね」と謝りながら恥ずかしそうに、はにかむ。
玄関前の女子達の次に騒がしくなったこっちに
1人の女子が、ソラ君がここに居る事に気が付いた。
「相野谷くんがエレベーターの前にいる~!」
そう大声出して、猪の様に真っ直ぐ走って来る。
その声に釣られ、他の女子達も一斉に振り返る。
「うわ…バレたか。行くぞケイ、中川。」
ソラ君は青ざめながら、私と中川君の腕を引っ張った。
4人でエレベーターに、流れる様に無事に乗り込み6階へと向かう。
「…エレベーター前で良かったな…。」
「そうだね、紗百合。」
「お…お腹すいた…。」
紗百合と私と中川君は息を切らせながら、無事に部屋まで
たどり着いたのであった。




