4 僕が皆と行く理由
放課後の商店街は、
安売りされた食材の、買い出しを急ぐ主婦が多数。
ゲームセンターに吸い込まれる高校生で溢れていた。
休日のお昼時の雰囲気とは、また違う賑やかさを持ったその場に
僕達は居た。
(僕の名前は中川 美紀。
今日は、水着を買うために洋服屋さんまで来たのですが
僕は只今、夕飯前の空腹でそれどころじゃありません(泣))
「紗百合、これ似合うと思う!」
「ホントだ~すごく可愛いよ!来てみる!!」
松崎さんは、白鷺洲さんの選んだ水着を嬉しそうに手に取った。
僕が空腹で、水着探す手が止まっている中
白鷺洲さんと松崎さんは、楽しそうに水着を選んでいる。
女子と言うのは、こう言う時に輝くらしい。
僕が美味しいものを食べる時と同じように。
彼女達が試着室に向かった後
僕は、さっきまで彼女達を見て微笑んでいた相野谷君に尋ねた。
「ねぇ、相野谷くん…。」
「ん?何だ?」
僕はふらついた足取りで、手に持ったものを相野谷くんに見せる。
僕の手にした物を見て、相野谷くんは一瞬目を見開いてから
それから目を離し、左手で髪を触りながら溜息を吐いた。
それを気にせず笑顔で尋ねる僕。
「これどう?」
「ん…あぁお前、本当センス無いとしか言えない。」
聞き捨てならないセリフに、僕は頬を膨らませながら考える。
赤いヒョウ柄の水着のどこがダメなのだろうか?
カッコイイと思うんだけどな~ヒョウ柄。
「コレにしとけ」
そう言って、青い生地に一筋の水色のラインが引かれた
地味な水着を僕に渡す。
僕は少し睨みつけながら素直に受け取る。
…僕からすると、絶対こっちの僕の方がセンスあると思うんだけど。
(…まぁ、親友に選んでもらったの凄く嬉しいな♪)
そう思ってニカッと笑顔になる僕。
白鷺洲さんと松崎さんが選び終わった後、僕達は水着を買った。
この高校生活は僕にとって、一生大切な時間になるだろう。
嬉しい事ばかりで少し戸惑っているけど、相野谷君達と友達になれて凄く嬉しい。
水着くらい1人でも買える。
なのに何故皆を誘ったかと言うと、
皆で買い物なんて、中々出来るものじゃないから。
だから今日、皆と来れて嬉しいと思っている。
(だって…)
お腹は膨れないけど、喜びで胸いっぱいになれる。
この一秒一秒、もう一生戻る事の出来ないこの時を
皆で共感しあえる事が出来るから。
そう僕が、心の中でこの世に感謝していると、皆が僕をよんだ。
「中川置いてくぞ?」
「中川君」
「何してんだ?お前」
それに気付き、現実に戻る僕の意識。
「ごめん~まって」
いつの間にか、皆は自動ドアの前に立っていた。
僕は軽い足取りで、温かいお日様の光の様な皆の方へ走って行った。




