2 橋本達
昼休み
お弁当や購買のパン、学食で買ってきたうどんを食べる生徒で、
教室は賑わっていた。
その中で橋本達は、今日の6限にあるホームルームに心を躍らせていた。
「おい、相野谷の奴、今日はなんか雰囲気変わっていないか?」
パンを噛じりながら貝塚が4人に尋ねた。
弁当のおかずが取れなくて、嫌気が差していた新居も口揃える。
「実は俺も思ってんだよ。アイツ何か昨日あった時から何か違ったぞ?」
橋本が頬杖付きながら、紙パックの牛乳を飲んでる中
隣にいた高橋が嬉しそうに言う。
「なんか今日は邪魔されなかったし、ケイちゃんに挨拶できたよな」
安田は「そうだね」と嬉しげに言ってから
「何か角が取れたっつうか、丸くなったんじゃね?ガハハ!!」
と言い品のない笑い方をする。
たまに米粒が飛んでいるのを、見なかった事にして。
橋本は、空になった紙パックのストローから口を離して
「…もしかしたら誘えちゃうんじゃね?」
真面目な顔で言うと、4人の視線は橋本に集まった。
「え?何に?」
やっと取れたおかずが、落ちたにも気に成らなくなる程
状況が理解出来なかった新居は4人に聞く。
その疑問を大笑いしながら解く安田。
「聞いてなかったのかよ。今日のホームルーム修学旅行の班決めだぜ?」
「おお!マジかソレ!!」
あはは、と皆で一笑いしたあと
パンを食べ終えた貝塚がニヤッと笑みを浮かべながら
4人以外には聞こえない様に声を潜めた。
「…さそってみる?出来んじゃね?」
「お…おう。いやぁ…流石にまずいんじゃないか?」
バツの悪そうな顔して高橋が
何かに怯えたような声音で、声を潜めながら言った。
安田は、それを笑い飛ばしながら米粒を飛ばす。
「そんなことねぇって。なんか今日の相野谷違うし出来ちゃうんじゃね?」
「とりあえず俺等、班組まね?」
(てか安田汚い。)と思いながらも口に出さず
新居は気にしていないように装いながら4人に尋ねた。
すると4人とも皆口を揃えて
「いいねぇ!!」
色よい返事を返してきて、新居も満足気だった。
しかし良く考えたら班は最低4人、最高5人で組まなきゃいけないのに
俺等皆合わせて丁度5人。
「て、おい!一人抜けろ!ケイちゃんが入れねぇだろ!!」
「え~」
「最高5人なんだから誰か諦めろよ!!」
言い争いをしていると橋本は
紙パックを、明らかにカッコつけで
右手でクシャリと潰し
「しゃあねぇな…」
と、覚悟を決めたような凛々しい顔立ちで言った。
それに、皆は瞳を輝かせて聞いてみる。
「お?橋本抜けてくれんのか?」
「いや?ジャンケンにしよう。」
何時ものヘタレ顔に戻り、しれっとそう言い出してきた橋本。
なんか期待を裏切られた感がハンパなかったが、俺等は素直に勝負に挑んだ。
「最初はグー…ジャンケン!」
「ポン」と出すときに、勢い良く教室の扉が開いた。
教室に入ってきたのは相野谷達で、相野谷は何時も通りに席に座った。
そう。何時も通り。
朝の雰囲気の面影が、塵一つ感じられない。
「…おい、誰だよ相野谷が丸くなったって言った奴」
絶望の極限にまで立たされた様な表情で、安田が震えながら尋ねた。
高橋は相野谷を凝視しながら
「…お前だろ?…あれじゃあ…丸くなったと言うか、ヒッ」
相野谷の目から放たれる、男子達へ向ける邪眼を直視してしまい
体を縮こまらせる。
悪寒を感じ取り、橋本も小刻みに震えた。
「目があっただけで、殺されそうだぞ?…コレ」
そう言って橋本は、涙目で訴えてきた。
「…なぁ、俺等ちょうど5人だし…班組もうか。」
そう言いながら、新居はやっとミニトマトを取る事に成功し
口に運んだ。
新居の目は、死んだ魚の様に希望の光を失っていた。
それを見て4人も同じような目になる。
「お…おう。命惜しいしな。」
この5人組は震えながら、班決めを大人しく行ったのであった。




