16 デートのお誘い
ベットに横たわる牛刀を眺めたケイは、特に驚いた事なく
普通に「どうしてこんな所に包丁あるの?」と尋ねてきた。
俺は牛刀を急いで掴んで、机の上に乗せながら苦笑いを浮かべる。
俺は冷蔵庫の中にロールケーキがある事を思い出して
「実は、これからロールケーキを食べようと思っていたんだ。
危ないよね、ベットに置いちゃうなんて。」
苦しながら言い訳をする。
それを聞いたケイは、右手を口元に寄せて笑いながら、嬉しそうに
「楽しみ。待ってるね♪」
そう言って大人しく座って待っていた。
急いでロールケーキを取りに行き6等分に切り分ける。
切り分けたロールケーキを皿に乗せケイに渡す。
ケイは嬉しそうに感謝の言葉を言って受け取る。
カシャンと金属音が冷たく響き、俺は手錠を掛けていた事を思い出す。
急いで鍵を持って、ケイの左腕を引き寄せる。
「ソラ君、今日は泊まって言っても良いかな?」
突然の申し出に、俺は驚き手錠を外す手が止まる。
「実は、家に帰っても、誰も明日の夕方まで帰ってこないし…。」
そう言ってケイは寂しそうに上目遣いで此方を見つめてくる。
(えっ…イヤ普通に、それはまずいだろう。)
戸惑っている俺に、追い打ちを掛けるかの様に可愛い声で「ダメ?」
と言って、首を傾げる。
俺は目を細め唇を少し噛む。
正直言って俺としては大歓迎。だが、年頃の男子にとっては
好きな子と1つ屋根の下となると流石にまずい。
はっきり言って理性を保つ自信がない。
だって実際、俺の事をケイはかなり信用している。
逆に、無防備過ぎるほど、信用されすぎて怖いくらいだ。
信用というか、彼女は人を疑う事を知らないから
中学生のある日、思い切って嘘をついた事があるけど
嘘だとバレなかったし、疑いすらしなかった。
俺がいなかったら悪い男に
引っかかっていただろうと思い、ため息を吐いた。
どう反応して良いのか戸惑う俺に気付き、ケイは諦めた。
「…泊まるの我慢するから、明日デートに行こう?」
俺はその言葉にホッとした様な、チャンスを失ってがっかりした様な
複雑な感情を抱いた。
「…あ、良いよ何したい?」
ケイはロールケーキを美味しそうに食べながら、嬉しそうに
「『ポチと僕の366日』一緒に見に行こう?」
肩をすくめて笑いながら言った。
俺は聞き覚えのある題名に驚きを覚え、ケイに尋ねる。
「…え?それ今日見に行ったんじゃ…。」
「え?…えと…。」
ケイは瞳を揺らし戸惑いを見せた。
あ、しまった。まだ映画の名前は、直接ケイから聞いてない。
俺がケイがこの映画見ていたという事を知っているのは不自然だ。
「ソラ君とも一緒に見たかったな…って、見てて思って…。」
ケイはそれに気付く事なくボソリとつぶやき、
恥ずかしそうに目を伏せながらロールケーキを口にした。
俺の失敗に、気付いてない事が分かり一安心しながら
(それって…。
松崎と遊びに行きながら、俺の事も考えていたって事かな?)
俺を見てクスクスと嬉しそうに笑っていたのが少し気になるが
(俺は自惚れても良いのだろうか。)
そう悩み、口元に触れると、体中が暑くなっている事が分かった。
鼓動が徐々に早くなってくるのが分かった。
ケイが笑っているのは、俺の顔が真っ赤になっていたからだろう。
ケイは食べ終え、ベットから立ち上がり
「では、また明日10:00外集合ね。」
そう、言い残して帰っていった。




