10 沈黙の寝室
私を引き摺りながら、ソラ君は耳元で何か呟き続けてた。
もう我慢出来ないとか、もう逃がさないとか。
何時もと様子が違う彼に、戸惑う事しか出来なかった。
何時もはこんな事しないのに、なぜ彼は力任せに私を引き摺るのか。
悲しく思えてきた。
連れて来られたのは彼の部屋。
前来た時と同じように、白くてキレイな部屋。
ベットの上に座らされる。
その時やっと布を取ってもらえたので、喋る事が出来た。
「…けほっ、どうしたのソラ君。今日なんか変だよ?」
と、言えた後、直ぐ彼の唇で口を塞がれる。
彼は、驚いて緩んだ口内に舌を忍ばせてきた。
んっ?!んん~!と、言葉の続きが、うめき声に変わってしまった。
恥ずかしくて顔が熱くなる。
キス初めてなのに、いきなり舌入れてきたから、驚いてむせ返る。
しかし彼は咳する暇を与えず、舌を絡ませてきた。
苦しくて…。もう体に力が入らなくなり方針状態に陥る。
カシャリと言う金属音と共に、不意に左腕に冷たい感触を覚えた。
手錠だった。
手錠はベットの、鉄格子みたいなヘッドボードに付けられていて
左右に揺らすとカシャ、カシャと音を鳴らすだけで外せそうもない。
彼の予想外の行動に、戸惑いを隠せない。
彼は拘束した後、私を置いて部屋を出て行ってしまった。
けど、彼が怖いとは1つも思わなかった。
ただ、何で彼がここまで追い詰められているのかが知りたかった。
「ソラ君…どうしてこんな事を…。」
私を家に引きずり込む時、今すぐ泣き出しそうな顔をして、私を見ていた。
しかし、手錠を付けた瞬間、彼は笑っていた。
どっちもソラ君なのに、雰囲気は大きく違っていた。
でも、ソラ君である事に変わりないし
どちらも愛おしいと思った。
ベットに寝そべり、冷たい手錠に手を乗せる。
そう言えば、この部屋ってこんなに静かだったけ?
外の音1つ聞こえない。聞こえるのは私の呼吸音。
(前来た時も、ソラ君と2人で居たから気付かなかったけど
1人ってこんなに静かなものだったのね。)
1人でこの家にいる彼を想像する。
つまらなそうにパソコンの電源を入れ、何か音楽をながす。
ながした後暇つぶすために本を読んだり、スマホでゲームをする。
決まった時間に夕食作り、1人で行う食事。
私みたいに家に帰れば、お母さんが迎えてくれるわけじゃない。
温かいお風呂や、ご飯が用意されている事も無く。
何もかも1人でこなして、静かに眠る。そんな毎日。
…目から涙が零れていた事に気づいた。
「…ソラ君……。我慢できないって1人が寂しいって事…?」
ベットの上、1人呟やいた。
その部屋には私以外誰もいなくて、私の声は沈黙の寝室に
一時響かせただけだった。
「…それとも趣味?」
ケイは手錠をジッと見つめ、ソラ君の新しいプレイについて
真剣に考えたのであった。




