9 今日は帰れない。
朝はあんなに良い天気だったのに、空は曇っていた。
日も暮れて来たしと、紗百合と別れた。
湿っぽい空気の中、私は1人家へと向かう。
(今日は楽しかったな~。)
私は映画館で買った『ポチと僕の366日』のファイルを持って
幸せな気分で微笑む。
(寝ちゃっている紗百合を起こそうかと迷ったが、やっぱり起こしてあげた方が良かったかな?
余りにも気持ちよさそうに寝ちゃっているものだから、つい起こさなかったけど
面白かったから観せてあげたかったな…。)
そう考えながら空を上げた。
曇っている空が、ムスっとしたソラ君みたいに見えて
私は1人笑う。
「…ソラ君とも観たかったな…。」
歩きながら、零れ落ちた唯の独り言。
私は、寂しいなと思い視線を地面に移し歩き続ける。
(ソラ君…今何しているのかな…。
胸が痛い。切なくて…切なくて苦しいな…。
早く会いたいな…ソラ君に…。)
だんだん早足になる。目から何かが零れる。
確か私のお母さんとお父さんは、明日の夕方まで帰ってこない。
だから今日は遅くなっても大丈夫。
(ソラ君…会いたいよ。)
鞄からスマホを取り出す。
と言っても彼の家は、もう目の前にあった。
呼び鈴を鳴らす。
するとドアを開けて、彼が姿を現した。
「待っていたよ。」
そう言って彼は、私を抱きしめた。
会いたかったよソラ君。
私も嬉しくて抱きしめ返したけど…
「!?…んっ…ソラ君痛い!」
痛い。どう足掻いても抜け出せない。
何時もとは違う。
ソラ君の顔を見ると、今すぐ泣き出しそうな顔をして、私を見ていた。
「…ソラ君?…どうしたの…むくっ!?」
口元に布みたいので覆われた。
そのまま家の中に引きずり込まれた。
彼が今、何を考えているのか理解できないから
私は不安になった。




