3 昼食 中編
6月15日 金曜日
一昨昨日の昼食の時間から、今日も当たり前の様に4人で食べていた。
俺はお昼くらいは、ケイと2人っきりに成りたいと考えているのに
目の前には目障りな松崎と、親友の中川がケイと会話していやがる。
話していいのは俺だけなのに…。
左手に持つ箸の先を歯で噛みながら、中川を睨みつけるように凝視する。
おっとイケナイ。この感情は他の人に気付かれてはイケナイだろう。
心に沸き立つ黒く濁った闇の渦を、理性で止める。
その中に隠れる嫉妬と殺意と一緒に。
(こんな感情を抱くのは、自分に自信が無いと言う事だと分かっているんだけど
分かっているんだけど…。)
視線を動かしケイを見つめる。
松崎の寒いオヤジギャグに笑うケイ。
そんなケイを見て幸せを感じながら、黒い闇が溢れそうになる。
何より、色んな感情によって振り回される自分が一番ムカつき、
手に持っている弁当に目をそらす。
(あの場に松崎さえいなければ、こんな事には…。)
ソラは思い返しながら、松崎を睨みつけた。
松崎はそれに気付かず、下らないギャグを言い続けていた。
それは一昨昨日(3日前)の昼食時。
2人っきりで食べるのを諦め、4人で食べている時。
それはもう『そうだ京都に行こう』みたいなノリで
「そうだ!これからも、この4人で食べようよ!!」
松崎が目を輝かせながら、突然立ち上がり大声で言い出した。
その言葉に反応してケイも目を輝かせた。
中川は何の事やら状況が理解できていないようだ。
弁当を置き、両手を繋ぎ合わせている2人を交互に見て
俺に向かって首をかしげてきた。
「4人てその中に僕は入っているのかな?」
「あ、あぁ…多分。」
俺は頷きながら頭の中で会議を始める。
題は『4人で昼食を取る事によるメリット・デメリット』
まずメリット…楽しそうなケイが見れる。
デメリット…2人っきりになれない。俺以外の奴に話をするケイを見る事になる。
俺以外に笑顔を見せるケイ。松崎に手料理の弁当のオカズをあげてるケイ。
ムカつく。安らぐ時間が減る。嫉妬する。ムカつく。ムカつく。
…うん。いい事は一つしかないね。
よし。断る以外選択しないな。
俺はニコッと笑いながら、松崎の提案を断ろうとしたのだが…。




