17 鬼ごっこ 前編
「うわあぁぁぁ…!!」
豪雨の中、俺は、全力で叫びながら走った。
今さっきまで動けなかった事が嘘みたいだ。
声も出せるし、今走っている。
少し離れた事により、俺は心に少し余裕ができ、後ろを確認する
(振り切れたかな…?)
後ろから悪魔の様にニタッと笑いながら、相野谷が追い掛けて来ていた。
相野谷に捕まったら、何もかも終わる気がした。
振り切ろうと全力疾走してるのに、全然距離ができる事はなく
相野谷との距離が、少しずつ迫って来ている。
雨が口に入り、呼吸がしにくく段々頭が働かなくなる。
(誰かに…助けを………!)
そう考え、周りを見渡す。
現在走っているのは、高い建物の間の幅は、6m位の細い道。
周りの建物は皆コンクリートで出来た壁で、所々禿げたアスファルトが敷かれた
誰も通らなそうな場所。
今気づいたのだが、俺と相野谷以外の人は1度も見かけてない。
つまり、誰にも助けを呼ぶ事が出来なかった。
しかも、この豪雨と強風のせいで自分の叫び声すら聞こえにくい。
…と言う事は、他の誰にも俺が襲われているなんて気付かない。
俺は誰にも知られずに殺されるかもしれない…と言う恐ろしい事を想像し、
雨に濡れた体が、悪寒によって更に冷える。
そんな事に成らない様に、諦めず全力で走り続けた。
しかし、走り続けた先に待っていたのは絶望だった。
足を止めて、呼吸を整えながら前を見る。
行き止まりだった。
俺から見て、左右にある高い壁の間に
直角を抱くように置かれたコンクリート式のブロック塀。
俺の身長を遥かに超える、約5m位の高さだった。
目の前に広がる事実を理解し、ボロボロに疲れきった体から力が抜け落ち
咳き込みながら、その場に座り込む。
「ごゲッホ!!ヒュー……!ヒュー……こん…なの、無理ゲーだ…!」
今聞こえるのは雨音、壊れてしまいそうな程うるさい心音
俺が呼吸するたびに聞こえる笛音
最後に雨音に紛れて聞こえる相野谷の足音。
後ろには相野谷が、息を切らずに歩いてくる。
逃げたいのに…逃げられない…。
俺は逃げるのをやめて、後ろに振り返った。




