13 台風の影響で②
俺が牛乳をコップに注いでいると、家の電話が鳴り始めた。
こんな朝早くに…しかもこんな天気の時に、いったい誰が何の用で電話してきたのだろうか。
俺は電話を無視してコップを2つ机へ運ぶ。
俺が程よく焼けたパンを噛じる頃、母が急いで電話に出る。
アズサはご飯にふりかけを振り掛け、ご飯を頬張る。
母が突然大きな声を出す。
「え!?来ていませんけど…。こんな大雨の日に…分かりました…。」
母は電話を切りテレビを付けた。
テレビは天気の情報を映し出す。画面上には洪水注意報が流れてた。
深刻な表情を浮かべる母を見て、俺は只事じゃないと感じ
尋ねることにした。
「母さん、電話なんて言ってた?」
母は言うか戸惑いながら、
「あ…あぁ、佳祐の事、獅子と呼んでる派手な子いたじゃん?」
「獅子…あぁ、田中の事か。田中がどうした?」
母は唾を飲み込みながら、視線を窓に向ける。
外は相変わらず、強い風と雨の音が聞こえてくる。
「昨日の夜から行方不明なんだって…。」
「…え……。」
嫌な予想が頭をよぎり、冷や汗が溢れ出る。
「警察には届けたらしいけど…見つけたら連絡してだそうよ。」
「…わかった…。」
そう答えて、俺は冷めたパンを食べだす。
味がないパンを、無理やり飲み込む作業を繰り返し朝食を済ませる。
「御馳走様でした。」
そう言い残して、俺は急いで部屋に戻る。
(何で…?昨日まであんなにウザイくらい元気だったのに
何で…?どこに行ったんだ…?そうだスマホ!!)
毛布の上にあるスマホを掴み、電話をする。
…繋がらない…。
(電話に出てくれ!!頼む!!!)
しかし、田中は電話に出る事はなかった。
叩きつけるような雨が窓ガラスを揺らす中。
俺は薄暗い部屋の中、1人電話を掛け続けた。