1 梅雨入り
6月2日 土曜日
梅雨入りをした後と言うのに、雲一つのない晴天の中。
ケイと俺は商店街でデートしに出かけていた。
昨日とは違う、話し方も、仕草も、しおらしい。
何時も通りの、天使の様に可愛い彼女。
俺達は、服屋や本屋にも行き
それは充実した時間を過ごしていた。
しかし、夕方頃から彼女の様子が、又おかしくなってしまった。
まず、語尾が「~じゃねぇか」とか「~だろ」などに変わった。
次に、仕草や態度まで、男勝りな感じに…。
まるで彼女がケイじゃないような感じがして
俺は心配になり、彼女と家に帰る事にした。
商店街から外に出ると、雨が降っていた。
カバンから折りたたみ傘を出し、2人で帰る事にする。
彼女が何か言っていたような気がするが、話を聞くよりも先に体が
彼女の腕を掴み、俺の家へ向かう。
家に着き、俺の部屋へ彼女を連れ込む。
これで、2人きりで誰にも聞かれず、気を使わず話ができる。
「おい、さっきからシカトしてんじゃねぇよ。」
ケイが凄い形相で睨み、俺の腕を払った。
(うん、やっぱりおかしいな。)
彼女と出会ってから、約10年の付き合いになるが
こんなに馬鹿力を発揮した事無かったし、喋り方も汚くなかった。
それが、昨日の事件後や、現在の彼女に
俺は強烈な違和感を抱いている。
体の中身が、まるっきり別人のように感じた。
俺は、その疑問を晴らすために尋ねてみる事にした。
「昨日、何があったか教えてくれ。」
すると、一瞬キョトンとしていたが
「あぁ音楽室に行った時、女子を待っていたら田中が来てよぉジュース飲んだ。
んで、気付いたら気持ち悪い部屋にいたな。」
素直に教えてくれた。
(ん?昨日聞いてない事だな?)
話の進展に驚いた。
この質問は、ケイが昨日帰る前にも聞いてみた事だ。
しかし彼女は今回の事を、何も覚えていないらしく
学校に行く前の話しか、聞けなかった。
だが、今彼女はペラペラと喋り続けている。
「で、その部屋で奴らはアタシの体で
欲を満たしていたな。」
「んなっ!」
彼女は俺の反応を見て楽しそうに笑う。
まるで、無邪気な子供のような笑を浮かべながら
「気持ち悪かったから、ぶっ飛ばして
シャワー使っていたら、貴方が来たわけ。」
このタイミングでは不謹慎だが…この笑顔も可愛いと思い
俺は目を逸らした。
あと、新しいケイを知れて嬉しいと思う気持ちと
大事なケイを汚されたと言う悲しみにより
渦巻く気持ちを覚えた。
「…なんで…すぐ教えてくれなかったんだ。」
「貴方が知らないアタシだよ。
仕方ないんだよ…もう1人は忘れているし。」
意味がわからない。
もう1人は忘れてる?俺の知らないケイ?
…だが、そう考えると納得してしまう。
「もう1人のアタシが知らないアタシ。
白鷺洲 繼そ守るために作られた別人格…」
彼女は、悲しそうに笑みを浮かべながら
俺の目を真っ直ぐ見つめ言った。
「アタシ…ケイの別人格なんだ。」




