12 清潔感のある白をベースにした部屋
「ここ…は?」
目が覚めると、見知らぬ部屋に
大の字を書くような格好で寝かされていた。
清潔感のある白をベースとした部屋は
見たところ怪しい所はない。
寧ろ、ここに住みたくなるくらい充実した部屋だった。
ベットは低反発で寝てる時の体に負担が少ない。
枕は高級羽毛っぽい。柔らかすぎず、頭を支えてくれてる。
毛布も高級羽毛っぽいな。軽い。
…そして布の肌触りが良い。
寝床は完璧だ。
ここに住んでる人が羨ましい。
横を見るとテレビ、本棚、パソコンと…他にも…。
(じゃなくて!何で俺はここに居るんだ!?)
櫛田は、状況を把握する為に起き上がる。
…いや、起き上がろうとした。
しかし、左腕に掛けられた手錠によって起きれなかった。
「何だこれ!!」
左腕を上下左右に大きく動かす。
腕が痛くなるだけで、外れる気配が微塵も感じられない。
焦りとともに、体が痛覚を思い出した様に
頭、腕、足、特に腹部に強烈な痛みがはしった。
「痛っつぅ…。」
余りの痛さに、その場で蹲る。
(階段から落ちた時より痛てぇ…。)
小学校の時、
階段の側で友達と悪ふざけをしてたら、転んで落ちた。
幸い打撲で済んだが、翌日
体が悲鳴を上げるかの様に、激痛で支配された覚えがある。
(呼吸しずれぇ…。)
咳き込みながらも、必死に呼吸を整えた。
(…ん?)
カチャリと静かな音を立てて、誰かが部屋に入ってきた。
(あれ…ちょっと待て?俺、さっきまで確か学校に…いたよな?)
コツ、コツ、コツ、と誰かが歩く音がする。
(で、計画の流れで相野谷にあって。それで…あ…。)
段々、その足音は大きくなってくる。
その音に櫛田は焦る。
早く逃げなきゃいけないと、頭の中で警報ベルが鳴り続けてる。
だが、左腕に繋がれる手錠が妨害する。
逃げられない。
足音が止まった。
今、この部屋で聞こえるのは、俺の心音と荒い呼吸音。
心臓は、破裂しそうなくらい脈を打ち続けてる。
いくら呼吸しても、苦しくて仕方ない。
逃げ出したい。逃げ出したいのに動けない。
足音がしていた方を、目を動かして見る。
視界には…目の前には満面な笑みを浮かべる悪魔が立っていた。
「…起きたようだね、櫛田くん」
「ひっ…」
(そうだ。俺は酸欠で…。)
櫛田はやっと、状況を理解した。
気絶した後、恐らく悪魔に連れ去られて、
ここで手錠で監禁されている。…と。
自慢の髪を捕まれて、体が悪魔の方に寄せられる。
悪魔は笑顔のまま、俺にこう言った。
「地獄はまだ…これからだよ?」




