10 ロックしようぜ
横目でスマホを見る。
スマホには、田中からの通知が届いていた。
「ケイちゃんを見つけられるかな?」
そう言ってニヤケながら、俺は科学室を出る。
どうせ、見つけられやしないだろう。
今頃、田中と苅部が彼女を
校内から連れ出し終えてるはずだから。
彼女はもう学校には居ない。
(相野谷が探し、焦り狂う所を、見物するとしようか。)
そう思い、相野谷の方に振り返える。
次の瞬間、腹部に焼ける様な痛みを覚えた。
俺の腹に見事、拳が食い込んでいた。
余りの痛みに、くの字に折れるように倒れ込む。
「かっ…は…?」
(…息が…でき…ない)
意識が朦朧とする中
最後の力を振り絞り、痛みの原因に睨みつける。
其処には、俺を見下ろすように相野谷が立っていた。
「…ケータイ借りるよ?あと、オマエにも来てもらう。」
「相野…谷…テメェ何…を…ゲホッ…」
手に握られていたスマホを、相野谷は拾い、中を調べる。
ロックを掛けてないスマホは、素直に全てをさらけ出した。
(…何…を?ス…マホ?)
気が動転する…寒気もする。
別に酸欠という訳では無い。
確かに苦しいが、そんな事を感じる暇無いし。
ただ、相野谷の行動に理解できなかった。
探すのでは無く、何故俺のスマホの中を調べるのか?
しかも相野谷は、焦るどころか冷静だった。
彼女が攫われたというのに?
運動以外苦手な俺は、普段使わない頭をフル回転させる。
腹が熱い…。上手く呼吸が出来ない。集中出来ない。分からない。
「こんな計画を…ね…。」
相野谷は、スマホをみて苦笑した。
(…!)
俺はやっと気が付いた。
相野谷が、スマホをみた理由を。
そして、田中によく「ロックを掛けろ」と言われてた意味を。
最悪な形で、やっと理解出来たのだ。
(会話の内容を知られてしまう!!?)
腕を上げスマホを掴もうとする。
しかし、腕は鉛のように重く、上手く動かない。
「かえ…せ…」
最後の力を絞った声は、虚しくも聞き届けられず
櫛田の体力を蝕むだけであった。
ついに体は酸欠を起こし、意識は暗い闇に吸い込まれたのであった。




