18 無理しなくていいの
家に帰ると、お母さんが笑顔で迎えてくれた。
私は微笑み、帰りの途中で買ったお土産を、お母さんに渡す。
「あら羊羹?美味しそうね。今日のデザートにしましょう」
そう言って「ありがとう」と私の頭を優しく撫でてる。
「楽しかったのね、良かったわ。
…でも何か納得いかないような顔してるわね。」
お母さんに、余計な心配掛けたくなくて
何時も通りにしてたつもりだったのに、バレバレだったみたい。
私は正直に疑問を口にする。
夢の話に付いてだ。
どんな夢だったか思い出せないけど、叫んだ言葉だけは覚えていた。
「お母さん…ともよって何だと思う?」
困った様に微笑みながら、お母さんは椅子に座る。
言おうか迷っている様だった。
その姿を見て、私はお母さんが何か知っていると確信した。
私も椅子に座る。
すると、お母さんは決心したのか重々しく口を開いた。
「ケイが小学生の頃、もう1人親友と言える子がいました。
ケイはその子が大好きで、家に帰るまではずっと一緒にいるほど仲が良かったわ。」
(小学生の頃の親友って…ソラ君と紗百合くらいしか思い付かないけど…。)
「その子の名前は上野 友代。
いつもツインテールの赤が好きな女の子。」
(赤が好き…。ともよ…。一緒にいた?)
「小学2年の…6月1日火曜日。
新たに「子ども手当」での支給が開始した日…だったかな?
その日の下校中、トラックに引かれて死んじゃったの。」
(…思い出せない。)
「思い出せない?」と、お母さんは私に尋ねた。
お母さんの言葉に一瞬ドキリとした。
頭を横に振る私に、お母さんは「やっぱり…」と呟くだけで
私を攻めたりはしなかった。
「ケイが友代ちゃんの記憶を無くした時、心配になって病院に行ったのよ。
でも異常は見つからなかったし、今もこうして元気でいてくれるから
安心しているわ。でも、何で友代ちゃんの名前を知っていたの?」
「…悪夢に魘されて…。起きる時、そう叫んでいたから。」
「…そう。」と言って、お母さんは真剣な顔で私を見つめた。
そして数秒経って、何時もの優しい笑顔に戻した。
「ケイ、無理に思い出そうとしなくて良いのよ。」
「うん…。」
暗い気持ちになっている私の前で
「よし。」と気合を入れてから、お母さんは立ち上がる。
そして、ウィンクしながら
「今日の夕食は、ケイの大好きな蕎麦にするからね♪」
そう言って、台所に向かっていくのを
私は何時の間にか、喜びながら見ていたのでした。




