8 勝負?ふざけんな
息を潜めて、ケイの後を気づかれない様に
(何処へ向かうのだろうか…。)
後を追う、俺の存在に気づかず
目的地を目指して足を進めるケイ。
丁度2階に差し掛かった時、ソラの前に
仁王立ちした、1人の男が立ちはだかる。
俺はその男を無視し、ケイの方へ向かおうとする。
余りにも無関心な俺に、男は慌てながら
俺の右肩を掴んで、必死に行く手を阻んだ。
「…何のつもりだ?櫛田 佳祐」
俺は、邪魔する櫛田を
カエルを見る蛇の様に睨みつける。
櫛田は自慢のライオンの立髪の様な髪を、撫で上げながら
負けず睨み返して来た。
「はっ。名前覚えてるなんて意外だな…話がある。」
「俺は、お前に話している暇などない。もう行く」
「おい⁉待て待てまて…!!」
俺は、右肩に掛かる櫛田の手を払い、ケイが居た方を見る。
しかし、そこにはケイの姿は既に無く…。
「ケイちゃんについての話なんだが?」
「…ラブレターの主はお前なのか?」
話の途中で櫛田は階段を登り、顎で使う。
…付いて来いって事だろう。
だが、なんか癪に障るから、言う事聞きたくないんだけど。
「ははっ…ラブレターは俺じゃない。山本だ。」
「1年の山本 純士か…。」
俺がソイツの名前をさらりと言い当てると
櫛田は鼻で笑い、ソラを階段の上から見下す様に見下ろす。
「つっ立ってないで、早く来いよ。」
「…………。」
ケイの居場所がわからない今、何もしないわけには行かない。
本当は櫛田を置いて、そのまま探そうと思ったが
仲間とつるんでケイに、ちょっかいを出していると言う事は
今回阻止しても、次回があると言う可能性がある。
(悩みの種は、早めに摘んどいた方がいい。)
そう思い俺は、静かに口元を歪ませ
櫛田の後に付いて行く事にした。
室名札には『科学室』と書かれたこの部屋で
男2人が立っていた。
「今から明日までの間、ケイちゃんを預かる。」
「どういう意味だ。」
「制限時間は明日の午後6時。」
「は?」
櫛田は(確実に自分達が有利だ)と
勝ち誇った笑みを浮かべ、無表情の俺に向かって言う。
「ゲームをしようか、相野谷君?」




