6 ボッチなボク
3人が、出掛けたのに気がついたのは今さっき。
皆の声が聞こえないと気付き、外の車を確認して
置いてかれたと理解した。
「皆酷いよ…何で僕を連れて行かないのさ…。」
この別荘の管理人、勝又さんを置いて
僕は松崎さんの別荘で1人、座り心地のいいソファーの上に
文句言いながら座っていた。
「せめて、一言ぐらい掛けてくれても良いじゃん…。」
勝又さんが、さっき用意してくれた紅茶を片手に
頬を膨らませる。
(まぁ、さっきまで1人で燥いでいた僕も悪いけどさ~。)
そう少しは反省し、僕は紅茶の香りを楽しみながら口にする。
…美味しい。いい葉を使っている様だ。
僕が暫く、紅茶を楽しみながら
窓の向こうに広がる海を眺めていると
皆が帰ってきた。
僕は嬉しくて飛び跳ねながら、お迎えに行く。
そして、元気よく飛び切りの笑顔で声をかけた。
「お!おかえりなさ……え?」
「ん…?ただいま?」
しかし、その勢いは
松崎さんの隣にいる、男性を見た瞬間消えた。
頭の中で色んな関係図が浮かび上がる。
頭の中がゴチャ混ぜになり、挙句には思考停止。
男と松崎さんは、楽しそうにバスケのお話をしてる。
何時もなら、僕も入りた~い!と言って、簡単に割り込めるのに
体が動けない。
鼓動が激しい。呼吸が乱れる。
頭がくらくらする。2人を見てイライラする。
などと、風邪にも似た症状が、僕を襲った。
「…もしかして、これは…」
俯きながら苦しい胸を、右手で押さえて
僕は深呼吸をする。
そして、冷めても美味しい紅茶を一気飲みをした後
相野谷君の方へ歩み寄る。
白鷺洲さんと、相野谷くんと、あと1人
女の格好をしている人が、楽しそうにお話をしていたけど
僕は特に苦しくならなかった。
むしろ楽しそうにしているのを見るのは、僕自身も楽しくなる。
(やっぱり…。)
「相野谷くん、相談に乗って!」
「唐突すぎて、展開が分からないんだけど…。」
僕は相野谷くんの手を掴み、皆がいるリビングから離れた。
この別荘の管理人、勝又さんからみた
中川の第一印象は
落ち着かない子だった。
別荘に入って来るなり、ドア、壁、床、玄関
窓、ベランダ、家具…等
一つ一つ、目を輝かせながら歩き回る所を見て
(貧乏な子なのかしら。
それとも、頭のネジが、足りない子なのかしら? )
と、哀れみの表情を浮かべていた。
しかし、大人しくソファーに腰を掛けて
出された紅茶を優雅に飲む。
紅茶を受け取る時、感謝の言葉を言った中川を見て
勝又さんは
(テンション上がって、跳ね回ってただけなのね。
お利口さんじゃない〜。)
と、中川を見直したのだった。




