表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/174

麺王ワルディー



〈どうだ? 学生生活は。心躍る感じかい?〉

 

 エヌゼットの穏やかな声が夜に重なる。


 俺は携帯を持つ方とは逆の手でグッとコブシを握り、少年漫画の主人公を気取ってみた。

「もう毎日が冒険さ!」

〈──初日じゃん〉

 

 俺の乾いたガッツに流水の如く、穏やかにツッコむんじゃないよ。


 エヌゼットは小さく笑うと、ちょっと優しい声を出してきた。


〈……カタリ、リュウシロウ──か。ふふ、なんだか侍っぽいね。その名も悪くないよ〉


「……そりゃどーも」

 

 適当な返答をしながら俺はワルディーお手製のナポリタンをフォークで巻き、口に入れる。


──あら。少し冷めちまったが、いいお味よコレ。


〈いいなあ。いいなあ。アタシにも一口くれよぉ~〉

 かわいらしい声を頑張って作っているエヌゼット。似合わん。


「貴様にはこの謎の供物が捧げられただろうが。コチラをお召し上がりください」

〈アタシにじゃなくてオマエの為に作ってくれたんだろ~。奥ゆかしいワルディーだよ。かわいいだろ? ……ていうか何これ?〉

 

 ロウソク刺さったメロンパンだよ。

 本日のメインディッシュ、『海鮮風メロンパンにロウソクを刺して』だよ。


 まあそんな感じで、エヌゼットもドコからか知らんが、視覚とは別に世界を見ている──といったトコロでして。



「ワルディー。うまいよコレ」

 俺がナポリタンを頬張りつつ微笑んで言うと、うんうん、とワルディーも満足そうに頷いて、自分のナポリタンをフォークでまきまき。


「……ダメだろ。ここは『ぐっはぁ! 辛! あのワルディーはまた変なスパイス入れやがって!』ってトコだろ。──キャラを履き違えるんじゃない!」

〈なんで叱ったんだよ……。まあ、ワルディーは麺にはうるさいよ〉


──ほう。そうなんだ。

 ただの酢メシキャラ……ではないと。いやどんなキャラ枠よ。


 どうやら自慢の妹みたいだな。姉バカか?


「お姉ちゃんが、ワルディーは麺にはうるさいって得意げに言ってるぞ。そうなのか?」


 俺がそう告げると、ワルディーもなんだか調子に乗った感じでフフンとドヤ顔。


「……少しメンがかたいレス。あげる時間をしくじったレス。ワルディーのニャポリタンはまだまだこんなものではないアル」


「ないアル」とキやがった。ドッチだよ。難しい顔でモグモグと味わいながら、確かにワルディーが麺にウルサイ。



「ん~……。かたいかたいカタイカタイかた~い!!」

「麺にうるせえ!!」

〈違う違う違うワルディー! そういう意味じゃないよ!〉


 机をばしばし叩いて騒ぎ立てるやかましいワルディーに、俺は衝撃で固まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ