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むっくら旧校舎



「みゅうううぅう!」


 絶好調だった。

 姫を追う今の俺……しっくりきてやがる。いい声出やがるぜまったく。

 

 向いているのか? などと自惚れながら、つま先立ちのバレリーナっぽい歩き方で俺はJKをストーキング。


「やああああ!」

 ぱたぱたと逃げ走るシズカは、奇声を発する寄り目のクリーチャーと化した俺を何度も振り返りながら叫んだ。


──ふん。逃げまどうがいい、おっきい子羊。

 真の姿を取り戻した超越者たる我がオッド・アイから逃れる術など、神でさえ持ち合わせていないがな。


 俺が「連れてってぇおおおお」なんてホラー演出も加えながら、変な二人(※シズカは正常です)はやがて旧校舎の敷地内へと足を踏み入れていた。




──へえ。意外と立派だな。

 

 俺は素に戻って、目の前にそびえる旧校舎を見上げた。

 

 ツタを這わせ、色あせた外壁が歴史を感じさせる五階建ての洋風レンガ造り。耐用年数はとうに過ぎているのだろう、あちこちにヒビや欠損も目立っている。一発砲撃でも食らえば連鎖で全壊しそうだ。

 文化財として残しているらしいが、これだと今の時代、避難場所としてはチョット使えないだろう。

 

 森の中の朽ちた洋館。まあ、夜にでもなればオバケは問題なく出そうだ。そんな感じ。


 

 さて、そういえばシズカはどこに……。


 あ、いた。

 校舎横にちょこちょこ連なる、木製の外壁みたいなモノに行く手を阻まれた感じで、どっちに逃げようか左右をキョロキョロしてやがる。


 逃がさないよ。

 芝生が広がる地面をつつつ、と気持ち悪いスピードで進んだ俺が姫に迫る。

 

 シズカはビビリながら、映画なんかで壁際に追い詰められた人がよくやる感じの壁の確認作業で緊迫感を出している。

 ばしばし。かりかり。壁。動きがちょっと猫っぽい。左右に逃げりゃいいじゃん。


「終わりだよ」

 なんて寄り目で不気味に言う俺が更に姫へと接近した、その時──!



「にゃんすいぃいい!!」

 ドスン!


 と視界が一気に暗くなり、俺は芝生でカモフラージュされていたビニールシートみたいなモノと一緒に……奇声を上げながら落とし穴に落ちていた。


 柔らかい地の感触。穴の中にはマットか何かが敷かれていた。

 それを確認した次の瞬間、バタン! と木製の外壁で、上手い具合に穴の上を塞がれた。



──ハメられた!

 あの姫! 誘っていやがったんだ! はしたない!



「やめたまえ君ぃ! これはどういう事だね?!」

 うろたえるのもシャクなんで、俺は紳士っぽく対応しといた。

 

 そうして聞こえてくる、策士の穏やかな声。



「──お忘れですか? ここはわたくし達の秘密基地でもあるのです。最新のテクノロジーと魔力が織り成す不思議なギミックでいっぱいなのです」

 


──そうだったのか。

 確かにこの状況……最新だ。

 この超越者たる私がハメられたのも頷ける。



「助けて欲しいですか?」

「へるぷ。へるぷみ~」


「もう、みゅうぅうって、しませんか?」

「はあ?! イヤ、やるけど?」


 

 暗闇の中で頭上から、姫の笑いを堪える声が小さく聞こえてきた。



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