魔王、理想を重ね
俺達の攻撃が、アダとなっているかもしれなかった。
激しい銃撃を生き抜いたヤツの自信が、堅牢な装甲と化していくかもしれない。
炎にまみれた異形な鋼鉄の様相は、恐ろしい不死身の化け物──、そんな認識を、迎え撃つ学徒達に刻みつけているのかもしれない。
それでも、やる意味はあったんだよ。
倒せたならそれで良かった。
倒せなかったなら、破壊する意思を繋げる為に。
その総意を集束して、明日への一撃とする為に──な。
──さてさて、そういったワケでして。
怒り狂った様なヤツの耐久値が今、7000を越えやがった。フザケんなあのヤロー。大したポジティブ路線バスじゃねーか。
〈全学徒へ! これより元凶にクラス・フォーの『認識兵器』を使用する! 同兵器の同時展開が無いよう注意されたし!〉
勇ましき乙女の声が響き渡った。
もし見込み違いなら最悪、また俺が手を貸すしかない。だが連続使用は危うい。だから──
頼むぞ、魔王。
クラス・フォー以上の『認識兵器』使用時に鳴らされる警報がインカムから鳴り響いた。
俺達三人はフロントから突っ込んでくる世界核に尚も発砲し続ける。
もう効いちゃいない。それでも撃ち続ける。──ナゼかって?
託すのさ。それでも折れない、俺達の意思を。
風の様に俺達の背後から駆け抜けて行ったサリオを確認し、俺と会長、ナツミの三人はすぐさま銃撃を停止した。
さながら牙を剥き疾走する狼。
突撃してくる世界核に対し、ハンドガンを乱射しながら真っ向から突っ走り立ち向かうサリオの身体に刹那、黒き異形の歪みが走った。
世界核が強化されたのなら、コッチもみんなの想いをのせた強化型魔王だバカヤロウ。
「ぬぅぅうえいさああああああああああああああああ!!!!」
スピードにのった魔王の足刀踏み込みが大地に激震を放ち、世界核もろとも、周辺一帯を縦に大きく揺らした。
突進がその揺れにフワリと浮かされた次の瞬間、フライングバスのフロント部分に、尚も突き上げる壮絶なサイドキックがミサイルの様にブチ込まれた。
インパクトのタイミングで恐ろしい衝撃波が近隣を襲い、まず俺らが後方に吹っ飛ばされた。
鋼鉄同士の衝突事故みたいな凄い破壊音で、世界核は瞬間的に前後幅が半分になるくらいまで圧縮された。
ひしゃげた鉄塊が斜め上方向に高速で吹き飛んでゆく。
ダメージ、5839。
魔王も凄いが、まだ生きてるアイツも凄い。
あれでもダメだったか。
──そして悪い事に、吹っ飛んでいくその方向には高速型世界核二体と今だ対峙するシズカがいた。
あのコースは危険だ。巻き込まれる。
──と俺が思った矢先。
〈クラス・フォー、フィナーレ〉
姫の低い声がインカムに届いた。
──そういう事、か。
魔王は二人。ぶつかり合う理想じゃない。同じ理想を重ねる。
ナイスパス、サリオ。
俺がそんな風に思ったチョットあと──空に、キレイな閃光が走っていたんだ。




