五時間目の戦士達
〈センサー作動。強制認識確認。敵影、世界核。確認数──約120〉
だめだ。ここのアナライザーは悪いがレベル不足だ。
肝心の大物が展開するジャミングフィルターに翻弄されて、敵影を認識しきれていない。
「いってきましゅ!」
学院内に戦の掛け声が立ち上る中、ワルディーが窓から飛び出し空へ掛けていった。
〈臨時軍政府、出現警報脅威度三を発令。──当学院防衛圏内上空にて小型世界核六体の侵入を確認〉
通信班女子学徒の響き渡る声に、三年総司令であるナツミの声が続いた。
〈──各員、対三戦闘配置。特戦兵を除く単独戦闘行為は厳禁とする。オフェンスセブン・ディフェンススリー。速攻でケリをつける。──私達の領域に踏み込んだ事を後悔させてやれ!〉
七割の攻勢に出るナツミの発破に、学徒達がそれぞれの熱い叫びで応えた。
そして空院学徒部隊の戦士達がそれぞれの役割のもとに走り出す。
〈──カタリ。聞こえるな?〉
襟に装着する小型インカムから強制着信でのサリオの声が届く。
携帯電話みたいなもんだと思ってくれていい。普段は着信音から入るが、非常時はインカムについた小さなボタン操作一つでこうやって段階を飛ばしてしまう事も可能だ。普段もできるが、やるとマナー違反で文句を言われるだろう。
「ああ、問題無い」俺はインカムに手を添え答える。
〈言った先からこの状況とはな、ラッキーボーイさん〉
「今やそんなモンだろ。珍しくもないよラッキーガールさん」
適当に返すとサリオは少し笑った。
〈ならお互いラッキーなまま終わらせよう。今向かっているからそこで待て〉
「了解」
俺は通信を切り、視覚とは別に世界を見た。
学院からそう離れていない住宅街上空三キロ付近。
ワルディーがUMアクロバットによる光の地に足を踏みしめ、それと対峙していた。
人類の敵。──通称、世界核。
その形態は時に異形な人型であり、時に歪な戦闘機。ある時はどす黒い建造物っぽくもあり、ある時は謎の球体っぽくもある。
まあ実に不定形なヤツらだよ。大きかったり小さかったり。とても、自由だ。
黒キモ、覚えてるか? あれも世界核だ。
なんかヘンなヤツだったが、人類の敵に変わりはない。あの後、ワルディーがカタをつけた。
今、ワルディーをじっと見ているそれは、人型に分類されるモノだった。
空に立つ、高そうなスーツを着たおっさん。ただし、俗にいうバケモノだ。
その身にはプラズマがパチパチと発しており、手や足が不安定にぐにゃぐにゃと歪む。
顔は、もう、顔じゃない。ぐちゃぐちゃ、かつ、パーツの数が多すぎる。
「なんでも買ってあげよう」
ワルディーとの距離、約十メートル。
グチャグチャの紳士は共通語で言うと、ゆっくりとワルディーに歩み寄っていく。
何か哀れみすら覚えるくらいの異形。
ワルディーはやや悲しげにそれを睨み、何度か首を横に振った。




