おやつ率
「──それではカタリさん、また放課後。ワルディー、カタリさんをよろしく」
「ゆっくり落ち着いてしゃべるんだぞワル坊」
「頼んだよワルディー。じゃあまたな、後輩」
一通り俺に理不尽な制裁を与えて気が済んだ三人の女子は、食器などを手に、爽やかに歩き去っていった。
ばいばーいと手を元気に振って見送ったワルディーがくるっと俺に向き直り、嬉しそうに身体を揺すりながら言った。
「リューシロ! じゃんけんGO!」
「探検だろ? じゃあよろしく頼むよ」
別にイラんけどな。とりあえず従っておこう。
「カタリくん、今から探検行くんでしょ?」
と、後ろのテーブルで駄菓子を並べてオヤツパーティー真っ最中のグループの中から、メイクのキマッたギャルが俺に話しかけてきた。
「うん」とだけ頷いた俺に、「持っていくがよい」とギャルはファンシーなビニール袋をくれた。
あら。
ポッキーが三本、レモン飴が一個、小さなビスケット三個、チョコが二個。
そんな感じでバラけたお菓子が入っている。
「こ、これは」俺はそれっぽく驚いてみた。
「おやつ袋じゃ。それがあれば魔王を倒す事が可能じゃ。──ワルディーいくよ~」
ギャルは奥のワルディーにも同じ袋をぽ~んと投げ渡した。
パシッとナイスキャッチのワルディーは袋を掲げてはしゃぐ。
「ん、ん、りりちん! いただきまうしゅ!」
俺も「ありがとう」とグループにペコリ頭を下げると、「いってらっしゃい」とか「またね」とか、気さくなもんだった。
はは。おやつ袋か。こじんまりしててカワイらしいな。
こういう小物、嫌いじゃない。
いかにも女子っぽい、かわいいアイテムにちょっと和んでしまう俺であった。
──が。
それで終わらず、俺とワルディーが食器を持って返却口に向かう間にも、そこらへんの女子達が俺達の手にするおやつ袋を見ると「そ、それは」とか「ほい」とか「もってけ」とか「お待ちなさい」とか「許せぬ」とか「ん、これも」とか「まだ入るね」とか「BLに興味ありますか……?」とか、まあ~入れてくる入れてくる。
手持ちのお菓子をおすそ分け。
「──パンパンじゃねーかおやつ袋!」
ファンシーな小物があっという間にファンキーな大物に変貌を遂げ、俺は衝撃に震えた。
「やったねえリュシロ! おやついっぱい!」
廊下を並んで歩くワルディーは袋に溢れるお菓子に大興奮だ。カチ盛りの上で飛び出すクッキーをはむっ、とくわえ、かりかりと味わいニコニコ。
しっかし、恐るべし女子校。おやつ率が尋常ではない。
どんだけ菓子持ち込んでんだよ。業者か。
俺が唖然と、ワルディーはルンルンと歩いていると、それは立ち塞がった。
「────あらあら少年。生意気ね」
「あ! 危にゃいリュシロ!」
────TO BE CONTINUED




