ハーレム・ランチ3
「カタリさん、ありがとうございます。この恩はいつか必ずお返しいたします。はい沙理緒、半分こ」
シズカは嬉しそうな顔で二つのコロッケがのった皿を手に、一個をサリオに渡した。
「いいのか? カタリ。次もGETできるか分からないぞ?」
サリオが訊いてきたので、譲り合いとか面倒だから適当にかわす俺。
「……ふん。これはハンデだ。俺くらいのジャンケンマスターになると三回先の勝利まで見えてしまってつまらん」
「マスタークラスだったか……」
じゃ遠慮無く。とサリオも満足気だった。
「ん、ん、じゃ、このもろっけ、なっつんにあげるアル。これでみんなシアワセ! やったねぇリュシロ!」
うん。俺は? なんて野暮な事は言わないよ。ワルディーが一個残しといたコロッケはナツミに渡った。ワルディーなりにこの一個を誰にあげればいいか考えていたみたいだ。
「私にくれるのか。いい子だねワルディー。ありがとう」
ナツミは穏やかな笑顔でワルディーの頭を撫でた。微笑ましい。
と、シズカがセットのご飯にいそいそと何かやり始めた。
レンゲを使ってきつねうどんのおつゆを茶碗めしにかける。ある程度ご飯が浸ると、その上にお揚げを一枚のっけた。
「はい、カタリさん。ご飯余ってしまうから」
何これ。
俺は目の前に置かれた変なご飯をじっと見る。見たまんまだが。きつね……雑炊?
「おいしいですよ、きつねごはん。さらさらいけます」
きつねごはんと言うと、酢メシに味付け油揚げを刻んで混ぜ合わせた、所謂、簡易版いなり寿司的なものがあるらしいが、これもきつねごはんらしい。まあ、油揚げとご飯だ。
俺はテーブルに備え付けの食器入れから箸を取り出し、きつねごはんをさらさらと頂く。
「むう!」
俺の声にワルディー、ナツミ、シズカ、サリオがビクっとした。
柚子だ。柚子の香り。この女さりげなく薬味を添えていやがった。そしてこのダシ。さすが京都。ほんのり甘みもあるつゆは薄い色から想像できないが、昆布、カツオ等のうまみがしっかり引き出されている。
ああ、メシ粒がはんなりとおめかしして流れ込んできやがる。
続いて俺は油揚げを口に含む。
「おう!」
俺の声にまた少女達はビクっとした。
ジューシー! 噛むとじゅわり、甘辛のいやらしいオツユを出してきやがってこのキツネ!
大振りの油揚げは肉厚で、豆腐感がすごい。これがお揚げさん。油揚げとは一味違う、京揚げってやつですか。
ああ。京揚げで出来たお家に住みてえ。
「こら旨い」
世界統合への流れにより、今やあまり聞くことのない方言で俺は感想を述べた。
「そないに美味しおすか?」
シズカが嬉しそうに答えてくれた。キレイな響きだ。
京美人は見た目だけではない。むしろ発する音こそが重要な要素だと思う。
なんて、それは人間全てにも言える事かもな。などと、小賢しいですか? そりゃ失礼。




