お昼ごはん2
あー、だりぃ。
俺は気だるげな足取りで教室から出ると周囲を見回す。
廊下にはおしゃべりを楽しむ者達や小走りでどこかに向かう者達、友人同士で円になって座り込み、焼きそばパンとかアンパンとかを美味しそうに食べながら笑い合う者達の活気なんかが満ち溢れていた。どこかから香辛料のいい香りも流れてくる。誰かカレー食ってんな。
さて、ワルディーとシズカはどっちに……。
「リューシロ! はよはよ! おっそい!」
「その程度のようですね!」
あ、いたいた。
廊下の向こうで俺を待つ二人。シズカの変な挑発に乗ってやり、俺はちょっと小走りで後を追う。
それを確認すると二人はまた、わぁ~い、とハシャぎながら学食を目指す。
ははは。お~い、まてよ~。ってなるかバカ。何これ。めんどくせ。
「え今日クリームバーストってまじ?!」
「激レアじゃん! 急ご!」
「うわあ残ってるかな?!」
あらあら。はしたない。そこらの教室からあれよこれよと女子どもが。なんたらバーストは大人気らしいな。
「あ、語君。学食行くなら今日の日替わりランチ大人気だから急いだほうがいいよ?」
「早くしないと無くなるよぉ~」
「カタリンが間に合うって、私、信じてる!」
廊下でダベる弁当持参組の女子達から言われ、「うん、うん」と適当な返事をしながら、まあ、一応急いでみた。
──学食『柴犬無双』。
うん。頭おかしいと思う。
案内板に記された学食名に女子校の闇を垣間見た俺は、案内に従い廊下の突き当たりを右折する。
おお。かなりの人だかりが正面に。パッと見、洒落た洋食レストランのエントランスにも見える。さぞ華々しいランチタイムをみんなで楽しんでいる事だろう。
しかし、白を基調としたそのエリアに俺がノコノコ足を踏み入れると、そこは戦場だった。
「おのれ、おのれぇぇ!」
「恥を知りなさい!」
まず目に飛び込んできたのは例の生徒会長とシズカの後姿。その他大勢が不安げに彼女達を遠巻きに囲んでいる。
コブシを握りいきり立つ生徒会長と、シズカがビシッと人差し指を突きつけたその先に、禍々しい気迫に包まれた黒髪ショートカットの女子が立ち塞がる。
「リューシロ! へんたいレス!」
人だかりの中から、俺に気付いたワルディーが駆け寄ってくる。
──どうやら大変な事態らしい。




