お昼ごはん
「リューシロごはんネリ! ぺろぺろっすね~!」
多分、ペコペコなのかと。
なんやかんやで四時間目の授業が終わると、ワルディーの元気が一段と増した。
ランチタイムの時間を告げる鐘の音が鳴り響くと、よそのクラスの賑やかな声もよく聞こえてきた。やっとのお昼休みだもんな。ワルディーじゃなくてもそりゃあ元気になるよ。
「カタリ君。空院さんが来るから、ワルディーも一緒に学食でゴハン食べなさい」
ライフが自席で書類を作成しながら淡々と俺に言う。
「……でも俺、金無いんですが」
ボランティアから渡された僅かな金も、残りは小銭程度だ。まあ、別に必要無いんだが。
「心配しなくていいから」
微笑を浮かべてライフはそれ以上言わない。
めんどい。
どこか人のいない場所でボーっとしてようかと思ったが……。
なんて、俺が無気力な顔を浮かべているとワルディーが優しく俺の頭をナデナデしながらハートフルな笑顔を近づけてくる。うん。どアップの顔もカワイイと思う。
「りゅ、る、ししろ! ワルディーの酢めし、ニャンぶんこラモ!」
「ワルディー。半分こ、でしょ? ニャン文庫って、どこの出版社よ」
黙るがいい魔女! この聖女はペコペコにも拘らず、自らの糧をニャン文庫してくれるとおっしゃって下さったのだぞ! ……どこの出版社だよ。
「その必要はありません」
その穏やかな声と共に、教室のドアが開かれる。
はい変な姫キタよ~。
「ニャン文庫。それは、少年少女の美しき絆」
シズカは語りつつゆっくりと室内に歩み入る。なんでお前はまたマイク握ってんだよ。
「……例え私がぺこぺこな日も、ニャン文庫」
出版社が流すCMっぽい……。俺は固唾を飲んで見守る。
「ですがカタリン。心配には及びません。ぺこぺこの酢めしがニャン文庫である必要など無いのです!」
「なぜこの子は電源入ってないマイクに向かって、こんなにも力強く……」
ライフもとりあえず見守る方向だ。
「さあ行きましょう! 殿方ならば周囲の女子を唖然とさせるくらいの豪快な食べっぷりでフラグの一つや二つ、打ち立ててごらんなさい!」
「うにたべてゴメンなしゃい!」
ビシッ、と人差し指を俺に突きつけるシズカとワルディー。ワルディーに至ってはウニを食べた事を謝罪してるようにしか聞こえないが、二人して何やら挑発的だ。
──遠慮なんかいらないから、いっぱい食べなさい。そういったところだろう。
「今日の日替わりランチはクリームコロッケバースト定食ですよ! GO!」
「バースト」俺は衝撃に固まる。
「ん、ん、ころっけで酢めしGO!」
わぁ~い、とハシャいで教室を出て行ったシズカとワルディー。そのノリはさすがについていけないよ……と俺は立ち尽くす。
「ほら。行ってきなさい」
薄い笑みのライフにも促され、やれやれ、といった感じで俺も教室を後にした。




