ミサイアむかしばなし 第五話『虎えもん』
「──で、次の日……荷物をしょいこんだ聖女が、尻尾を高速回転させて……ぶ~ん、って、空をフラフラ、ココに飛んできたんだ」
「撃ち落としてしまえ」
「腹立たしい尻尾ね」
続くモチの語りに、俺とメガミは穏やかにツッコむ。
と──
タイガーは、おとなしい幼女をゆっくりと抱っこ。そうしてシッポを頭上でひゅんひゅんと、プロペラみたいにブン回し……
ぶ~ん、って、浮かんでった。
「──覚えておくがいい! これが《聖女コプター》だ!」
「《聖女コプター》!!」
「幼女を返しなさいモノノケ!」
ウザ過ぎる頭上のタイガーに、俺とメガミは衝撃に固まった。──マウファー、目を輝かせるんじゃない。おりてきなさい。
僅かな時間、空中遊泳を楽しんだ《聖女コプター》がほのぼのと着陸したところで……モチはまた続ける。
「舞い降りた聖女は程無く、近くの岩壁をコブシやらキックやらでボッコンボッコン砕いて……洞穴を作って住み始めたんだよ」
「まさかの手作業か……」
俺がボソリとこぼすと、タイガーは誇らしげな顔で口を開く。
「オマエ達もさっきは中々に居心地が良かったのではないか? ……あれこそ我が魔宮──《聖女の穴》だ」
「おい《聖女の穴》とかヤメろ。なんか卑猥なんだよ」
「いずれ爆破したい穴ね」
──俺もメガミも冷静に対応させて頂きました。
「……まあ、なんとなく話は見えてきたわ。──そうして聖女は健気なモチと聖剣を、遥かなる時の中で護ってゆくのでした。チャンチャン。と」
「そこだけ聞くと、なんかホントに聖女っぽいな」
少しばかりおどけた感じで言うメガミに、タイガーは小さな笑みでそう答えた。
メガミの短いおとぎ話に、マウファーとモチは優しい笑顔でささやかな拍手を。
俺は、といえば……
「……でも、アンタはなんで、モチなり聖剣なりを護ろうと思ったんだ?」
別にどうでもいいが……当然の疑問を、皆を代表して訊いてみたワケでして──。




