残酷のカタチ
そんなこんなで激しい試練を乗り越え──。
俺達はやがてクリューの大祭壇に通じる山道に入り、今に至る。というワケなんですが。
(……なあ。邪神ってのは、どんなやつなんだ?)
ゆるい斜面でも少しキツそうだが、頑張って歩くマウファーを横目で気にしながら……俺はメガミの脳内になんとなく、声を刻む。
(私もよく知らないわ。この世界にそこまで興味は無いし。だから知ろうとも思わない。アンタと同じよ)
俺と幼女の背後を歩く"大魔導"から素っ気ない返信。クールですお嬢様。
(……私が原因で巻き込む様な事態以外は、基本、動かないから。……別に私はテラに義理があるワケでもないし)
……あら。ますますクール、てか冷たい。まあ別に、温かいモノを求めるつもりもないが。
マウファーの気付かないところで、俺はちょいと後ろのメガミに視線を向ける。
(……俺には、何か義理があったのか?)
(こ、今回の事は、ただの気まぐれだし! べ、別にアンタの為にやったんじゃないんだからね?! ふん!)
ツンとする子犬。そりゃドーモ。
(──まあ、ここの人達からすれば恐ろしく強大なバケモノらしいわね。……耳にした話じゃ、かつて獣の様な異形の為、人々に虐げられた挙句に惨殺された女の未人が壮絶な怨念を纏い、化けて出てきたのではないか……という説が濃厚なんだって。そんな感じの風貌みたいね)
そうなのか……。
確かに町で、結構ケモノじみた人も見かけた。
でも、その話が本当だとしたら、なんか、やるせないよな。
望んでその姿になったワケでもあるまいし……心は普通の人間と変わらなかったのだろうし。
形ってのは、そこまで残酷なモンなんだよな。
それはやがて朽ち果て、絶対に失う物だと知っている、人間だからこそ神格化さえしてしまうモノなのかもしれない。──だからこそその形は、尊いモノであるべきと。
もしくは……。簡単に言えば、自分を普通の人間と認識すべく異形を叩く、そんな悲しい深層心理から生まれる防衛反応の一種なのかもしれない。
どこまでいっても自分の為、なんだろ。
醜いものを仕立て上げ、自らを引き立たせる。利己的。
……ただ、自分という意味の為。
──だが、無意味だ。
(……なによ。遊び人らしくもない)
なんとなく空を見上げる俺の頭に届く、低い声。
別に隠しもしなかった心がメガミに読まれていたが……それは彼女だって知るところだろう。




