王家からのクエスト
「──注目! これよりこの噴水広場において、王家主催の特別クエストを開催する! 我らが王ドグワーナ八世からの思し召しである! 皆、感謝し、我こそはという者は奮って参加をするよう!」
鎖かたびらと鉄兜を装備した衛兵の声が響き渡る噴水広場のベンチ脇、木工細工を並べた出店の前で──。
商品を見下ろし、ぼんやり突っ立っていた俺は……いたずらっ子なガキに、竹筒みたいなおもちゃの水鉄砲で股間を執拗に銃撃されていた。
「ジュド! なんて事してるの! お兄さんに謝んなさい!」
向こうでレディーストークに花を咲かせていたご婦人集団の中からすぐさま、わんぱく小僧のママさんらしき人が駆け寄ってくると、小僧の頭をひっぱたいた。
「へっバーカ! パーティーはこれからだぜ!」
まったく悪びれない、色あせたオーバーオールを着たチビっこい小僧は、そう吐き捨てると次の獲物を求めてダッシュで人ごみに消えていった。なんてアグレッシブなガキなんだ。
「──ご、ごめんなさいウチの子が……。ああ、こんなにズボンを濡らしてしまって……」
なんて、ハンカチを手に俺に寄ってくるママさんだが──びしょびしょな部分がデリケートゾーンなだけに、触れてもいいモノなのかと戸惑っている。
「あ、大丈夫です。ぽかぽかしてるし、そのうち乾きますから」
どうでもいい。特に怒りもせず、相変わらずぼんやりと、一応俺は平謝りのママさんを気遣ってその場から離れた。……まあコートの前を閉めておけば目立たないだろ。
広場には続々と、屈強な傭兵達や荒くれ者なんかが集まり始めている。
酒瓶片手に下品な笑い声を上げる重戦士から、長い猟銃を背負ったハンター、装飾煌くロッドを手にした魔術師や、その辺の戦士達にさりげなく薬草を高値で売りつける謎の武装商人一家とか。
俺は少し離れたところからその様子をぽけーっと眺めていると……衛兵長みたいな人が集団の前に現れ、用意されていた高台の上に昇る。そして一つ咳払いをすると、集団に向け、声を張った。
「──大勇者ファイアリスが終神へと達し、この地に遺されたは星宝『マガファエル』! はるか古の時代からクリューの大祭壇に刺さる、全ての災厄を切り払うと言われるその伝説の聖剣『マガファエル』のもとまで辿り着き、聖剣を人類から遠ざける忌々しき番人──悠久の邪神を討ち滅ぼす事ができた者には莫大な報奨金、そして今回は特別に広大な土地も加えて授ける! 挑戦者は奥で受付を済ませるように!」
お、おう。なんだかファンタジックな言葉が次々と。
衛兵長みたいな人のバリトンボイスに、集った多くの挑戦者達は目に見えて色めき立った。
「マジか! 創世神様々だな!」
「祭はこうでなくては!」
「……まあ王家もどうせ無理だろうと思って、気前よく報酬を上乗せしているのだろうがな」
「バッキャロー! やってみなきゃわからんだろうが!」
「そういってオマエは何回邪神に挑んでんだよ! いい加減あきらめろって!」
「ありゃほんとバケモノだからなぁ。"大魔導"クラスでなきゃ太刀打ち出来ないかもしれねえ。俺も前回足の骨折られてヒデエ目に合ったぜ」
「意外と今までに死者は出てねえからな。どっかに付け入る隙があるのかも知れねえ。俺はやるぜ」
「ばか、挑んだ者は知らぬ間に遅効性の呪いをかけられているってウワサもあるんだ。やがて謎の病魔に蝕まれ、骨と皮だけになって死んでしまう事もあるらしいぞ」
「う、ウソついてんじゃねえ! オマエそう言ってライバル減らす気だろ?! このイカサマ魔術師め! ──ウ、ウソって言って?! お、俺今回で挑むの五回目なのよ!」
「はあ……土地があればもう旅を続けなくて済むねえ。よっしゃ、あたいが貰うよ」
「馬鹿言っちゃいけません姐さん。アチキが貰うでゴンスよ」
ほうほう。なんだか盛り上がってんな。
提示されたのは……どうやら毎度おなじみで、最上級の難易度をほこるクエスト、らしい。




