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噴水広場にのこのこと

 

 

 いい天気だ。

 

 俺は路地を抜け、なんだか町をブラブラと始めていた。


 やがて俺は奥の王宮がよく映える、町の中央噴水広場にのこのこと進入。

 賑わう出店も建ち並ぶそのエリアは、耳に入ってくる祭りの音も一層、陽気に弾んでいた。



──あらあら、場違いかしら。


 そんな風に思ってしまう感じで……広場にはカップルとかファミリーの姿が特に多く見られた。景色もイイし……多分、町の人気スポットなのかな。

 うん。なんつーか、愛が溢れている。


 お一人様でやる気のないツラした俺の横を、やる気マンマンそうな彫りの深い顔のカップルが、今晩予約してあるレストランの話をしながらラブラブと通り過ぎていった。

──イヤらしい! 不純だと思いますが……いかがでしょう?!

 


──はい、そしてちっちゃい子供を肩車して、装飾の美しい噴水を眺める親父さんの後ろを俺がぼんやり歩いていると……。

 

 向こうの方でパレードしている王宮の近衛兵達が一糸乱れない見事な動きで長い突撃銃を空に構え、一斉に祝砲を上げた。


 パアン! 

 と、一帯に響き渡る音に驚いて、噴水にたむろする沢山の白い鳩みたいなのがバサバサと飛び立った。ママと一緒に鳩にパンくずを与えていた赤い髪をした女の子も銃声に驚き、泣いてしまう。……ビックリしたね。怖かったね。




──とりあえず、"大魔導"メガミの件は保留だ。

 嫌がる女に付きまとうなんて気が引けるしな。

 それに……一人を望むという気持ちも、俺には共感できてしまうから。

 

 仮に何かあった際は、すぐに駆けつけよう。

 という事で……酒場に戻らずどこかへ行ってしまった彼女については、それ以上は考えなかった。





「アナタ、その服装、あんま見ないね~。ドコからきたの~?」


 地面に敷かれた黒い絨毯。その上に並ぶ安っぽいシルバーアクセサリーを、立ち止まってボンヤリ眺める俺に出店の売人がにこにこと訊いてくる。

 千葉県の(かしわ)市によく居そうな、人懐っこい笑みをした中東系っぽいアンちゃん。若いが立派なヒゲ面だ。

 

 折り襟際立つ、長い裾が特徴の我が黒き魔装──。

 まあこの世界の軍人さんあたりが着ている軍服にも似たようなデザインの物はあるが、少年のファッションとしては珍しいみたいだな。


「……ああ。賞金を稼ぎに、遠い山奥の村から下りてきたんだ」

 言いながら俺も彼の笑みに乗って、少しだけ笑った。


 この町に息づく人々の顔の系統は結構バラバラだ。

 地球でいうところの白人系が多いみたいだが、アジア系や黒人系っぽい人達もちらほら。


 たまに未人と呼ばれる者ともすれ違った。俺が読者のみなさんにエルフと説明した存在だ。そのほうが解りやすいだろう。中には獣人とも呼べる様な外見の人もいたりする。


──だが大抵、そういった未人達の身分は低そうだった。

 きつい、汚い、危険といった、いわゆる3K的な仕事に従事している事が多いみたいで、街中で無意味に貴族から怒鳴られていたり、普通の人達からは避けられていたり、井戸端のババアどもからは陰口叩かれていたりと、散々だ。


 それでも明るい表情で頑張る未人や、全てをあきらめた様な表情の未人、その理不尽な扱いに怒りの表情で立ち向かう未人など……未人も多種多様みたいだ。



「山奥から~? 一人で~? そうなの~? デモもう、ワタシとアナタ、トモダチだよ~。ここにあるアクセサリー、全部トモダチ価格でイイよ~」 

 

 マジで柏とかによく居そうだ。人間のパターンなんてたかがしれているもんだな。


「ああ、でも今、金無いから今度にしとくよ」

 少し残念そうな素振りで俺が言うと、怪しいトモダチはお手上げジェスチャーでこんな事を言ってきた。


「なに、お金ナイの~? でもアナタ、トモダチだからイイ事教えるよ~。──アナタ賞金稼ぎの傭兵さんとかなんでしょ~? もう少しするとこの噴水広場で、王家主催のイベント・クエストが始まるらしいよ~。しばらくこの辺で待ってるといいよ~。で、アナタはそれに参加して賞金ゲットできたら、トモダチ価格で何かアクセサリー買ってよ~」


「買ってよ~」と、甘ったるい笑みが胡散臭いマイフレンド。

 王家主催のイベント、か。庶民のガス抜きか何かか? まあ、興味無い。



「……参加するかは内容次第だけど、そうだな、賞金を手にする事があったら、また来るよ」


 そう告げた俺に「待ってるよ~」と上機嫌のトモダチは、俺が立ち去るとすぐに次の客引きに入っていた。

 


──さて、やる事も無い。

 

 とりあえず俺は大して興味も湧かないが、噴水広場の出店を一通り、見回る事にした。



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