異世界・開幕
さて。なんやかんやで二十一時となりましたので、残念なお知らせを一つ。
……簡潔にお伝えします。
この時刻をもって、太陽系がとある事情により消滅しました。
太陽系どころの話ではないのだが、今、読者の方々がそこまで知るべきではないので……とりあえず地球周辺の状況について。
──消滅。地球も当然、消滅した。そこに存在していた数多くの生命も消滅。
月とか太陽、火星や金星とかも消滅してしまったんだ。
……では、そこに今、何が存在するというのでしょう?
新たなる局面は、そんな状況で始まっていきます。
「──あんた、名前は何ていうの?」
「……リュウシロウ。カタリ・リュウシロウだ」
「……ふん? あまり聞いたことない感じの名前だね……。その服装も珍しいわね。グーゲル大陸方面の出身とか、その辺り?」
「……ああ。といっても都会とは縁の無い、山奥にある辺境の村の出身だ」
「へえ、そうか。……まだ若いな。実戦経験はあるの?」
「いや、ほとんどない。山で小さなモンスターを追い払っていた程度だ」
「なんだ駆け出しか。随分落ち着いてるから結構な場数踏んできたのかと思ったけどね……」
「すまない、もともとこんな感じなんだ」
「……見たところ得物はその腕に装着した銃──みたいね。なんかその銃もあまり見ないタイプだね……。全部が金属で出来ている銃なんてアタシは初めて見たよ。……まあいい。登録は『銃使い』で構わない? 『銃闘士』なんてのもいいわね。『遊び人・銃タイプ』にしとく?」
「『遊び人』を細分化するんじゃないよ。……どっちかっていうと俺、『苦労人』なんだよね。……『苦労人』で」
「具体性に乏しいわよ。何が出来る人なのよ。職業『苦労人』って、誰がパーティーに誘うのよ」
「じゃあ『遊び人・銃タイプ』でいいよ」
「マジか……。まだ若いのにチャレンジャーだね。『苦労人』以上に『え?』ってなるが、謎の可能性も感じさせやがるわ。よし、決定だ。キャンセルは受け付けないから」
とある世界の城下町。
老若男女多種多様の人種、そんな多くの人で賑わうメインストリートの商店街中央にどでかく店舗を構える老舗の傭兵酒場にて──。
今ここに、『遊び人・銃タイプ』リュウシロウの冒険が幕を開けようとしていた。




