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電撃魔法ワルデイン


「──ああ、そろそろ『世界交代』の時間が来る頃か。……テラ君、調整はうまくいってるのかな?」

 ほろ酔いワルディーの防衛発言が出ると、メフィストが続ける。

 

 テラの瞳の色が瞬時に真紅へと染まり、彼女はそのまま少し瞑目。そしてまたゆっくりと目を開くと、子ギツネみたいなか細い声で答えた。


「……はい。この後、地球時間の二十一時に第四世界フェイズ・フォーへ移行します」


「そうか。……女神は相変わらず、といったところか?」


「あ、は、はい。近頃はあまり主張もしてこないです。この前、何か甘味を食べに行きませんかとお誘いしましたが、その、憂鬱そうにゆっくり、無言で押されてしまいました」


「……なんで彼女といい、リュウシロウ君といい、テラ君を押すんだ。それで転んだりでもしたら、この重そうな鎧だ。一人で立ち上がれないんだぞ」


「え、あ、一人で立つ事も可能でして……」

 むう、と納得のいかない表情を浮かべて謎の気遣いを見せるメフィストに、テラはちょっと困った。



「──話が逸れてしまったが、まあ、リュウシロウ君。……君を、何に誘っているのかは大体、解っていると思うが……。少し、我々に付き合ってみないか? このあと、予定などは無いのだろう?」

 メシでも誘うくらいの軽快さで、メフィストは俺にニヤリと投げかける。


……まあ、大体、解っている。ボウエイっちゃ、ボウエイ。


「……予定は無いが……やる気も無い。ここでの任務だけでお腹いっぱいだ。悪いが他をあたってくれ」

 

 眉間にシワはもう寄っていないが、少なくともフレンドリーではない返答。言いながら俺はほのかな焚き火に目を逃がしていた。



「あ……あの、りゅ、リュウシロウ、さん。一緒にいてくれるだけで、いいのですが……」


 テラの子鹿みたいなか細い声。またも俺をドキドキと見上げてくるから容赦はしないよ。


 俺は凄い寄り目で猫口をキメ、真正面から対応。聖女を迎撃した。


「あ、あ、すごい」

 

 わあ~、と、純粋に驚かれてしまった。



「テラにゃん甘いアル。さっきのリュシロ、なんか……ダメだったから、ビシビシいくアル。──みゃ、にゃ、魔法戦士ニャルディーが教育し直してあげるっけしゃあ!」


『ミーアキャットの型』でじりじりと俺に迫るワルディーは遂に東北方面の方言っぽい。なんだよ魔法戦士って。ロープレ気取りか?


「──この勇者リュウシロウを教育するとは生意気な。電撃魔法でもお見舞いしてやろうか」

 やれやれと、猫口だけキープの俺は魔法戦士を適当にあしらう。


「ぶっぶ~! ザンネンれした~。勇者はテラにゃんでした~。ん、それでね、メフィにゃんは魔法使いでね、キロにゃんは大魔王アル」


 ぶっぶ~、と残念な俺は、はしゃぐワルディーに思わず小さな笑みをこぼしていた。

「……じゃ俺は?」

「ん、ん、りゅ、リュシロはね! リュシロは……『じゅじゅ苑』のバイト」


 その流れでなんで俺だけ焼肉屋の店員なんだよ。

 女学院の最寄り駅近くにある大きな焼肉屋さん──『じゅじゅ苑』がワルディーのお気に入りらしい。昼休みに、屋上から建物を指差して教えてくれた。以前シズカ達が、お得な食べ放題コースにワルディーを連れてってくれたんだって。



「はあはあじゅじゅえん……」と、うっとり舌なめずりでトランス状態に入ったワルディーは……とりあえず放置で。




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