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プロローグ




「へっバ~カバ~カ!」

「うっせ! うっせ!」




 遂に最終戦争が勃発した。

 静穏に守られた宇宙は、奴の壮絶な精神攻撃により無慈悲な戦場へと変貌を遂げる。



「お前の母ちゃん……ルルルルゥ~♪」

「思いつかなかったのか……」

 だからってハミングはねぇだろう。

 俺は奴の精神波動に屈しない。



「……飽きちゃった」

「はえーよ」

 

 戦いは即、終わった。








「──なあ仲間になってくれよ~。い~じゃんかよ~。頼むよ~」

「あっちに行ってください。人を呼びますよ?」

「ちょっと呼んで欲しい気が……。マジで誰か来たらもう、ホラーだね」

 

 しつこい女だ……。俺は相変わらず宇宙でふわふわしながら適当に聞き流す。




 あ、語り手です。

 え~、ここは地球からそう離れていない宇宙空間で。



──まったく、神であり宇宙であり全てのモノと共にあるこの俺が、チョット暇潰しにかつて少年だった時の身体を構成して腰をクネクネさせていたらこの女は「ぶふっ! 何よその儀式」とか唐突に参上しやがって。

 

 あ、参上っていっても姿は構成していなく、彼女は声だけ俺に届けています。

 

 画的には星々が輝く素敵な宇宙で一人ふわふわクネクネとしながらブツブツ言い漏らしている少年とかドコのカオスだよ、といったところだが……読者の方々には宇宙の神秘とかその辺りの認識で手を打っていただきたい。



──彼女は『世界賊(せかいぞく)』。

 宇宙生命の脅威になるモノの一つだ。略して変態だ。

「どんな略称だよ! 定着したら困るよ!」


 なんて感じで彼女は人の心にも入り込める存在で、まあそれは俺も同じなんだが、特に「変態」あたりに否定のフィルターを張らずにいるとこんな調子だ。

 簡単に言えば心を読まれる事を俺が否定しなかっただけだ。



「やっぱまだ全然この辺り、船が安定しないんだよね~。厳しいわ~。ん~、なんだっけこういうの、所謂『前門の虎、後門のエロス』だわ~」



 撤退一択じゃねーか。

 めんどくさいから「それだわ」とだけ肯定しといて、俺は身なりをさりげなく確認する。

 

 うん、問題無い。全てを構成する最終粒子『ユニバース・マター』は特に抗わず、俺を構成してくれている。



…………昔、本当に遠い昔、俺がよく着ていた、強襲仕様の黒い強化学生服。

 折襟と長い裾が特徴的な戦闘服はとても丈夫で、俺のお気に入りだった。


 

 たまにね。たまに、こうやって自分を宇宙に刻んどかないと、自分が何なのか解らなくなるから。



──宇宙が、俺を忘れてしまうから。

 


 なんてな。



 別に、俺自身が消えて無くなる事は構わない。寧ろ望むところなのかもしれない。


 恐らくそういった破滅願望が時として力となり、俺はたまに消滅する。

 コンビニでちょっとお菓子買ってくる位の気軽さで消滅する。


 心地よく身体が世界に融け、その魂も全てから解放される様な、大いなる白に包まれる。

 それはとても気持ちイイんだ。

 オ○ニー? バカヤロウ。その二百倍はイイよ。

 

 

 宇宙の果てに在るモノが、全て赦してくれるかの様なんだ。

 積み重なった孤独と悲しみを対価とし、頑張ったね、って、最愛の人に抱き締められるみたいな安らぎ。


 なあ、そんな風に死ねたら、生まれた価値もあるだろ? 




 そして、引き戻されるんだ。──ゆるさない、ってな感じで。


 


 アイツが。──もう死んじゃったんだけどな。

 アイツが最後に、俺を呪って神にした。


 この宇宙が、いつまでも俺の死を赦さない。


 


 俺は幼馴染でもあったアイツに惚れていた。

 アイツの前向きな生命力、命を思いやる心。そしてエロい乳。

 

 俺とアイツは一緒の高校に通っていて、それと同時に未成年の兵士として、故郷の星で起きた戦争で共に戦っていたんだ。



──どんな戦争か。それは読者さん、これからゆっくり話していくよ。

 戦争っていっても、別に難しい事なんかありゃしない。単純な話だよ、きっと。

 もしかしたら読者さん達の世界も無関係でいられないかもしれないよ? 

 それを否定、肯定するもアンタら次第。


 実はアンタらの脳ミソってヤツは結構寛容なんだよ?


 



「……大丈夫だよ。いい男だよアンタ。その格好だって賊っぽいっちゃ、ぽいじゃん」


「別にナルシストを気取ったわけじゃない。それに褒めたって仲間にならんし」

 追憶から引き戻された俺は無気力な口調で、だが、そうかな? といった具合に自分の服装をチラチラと気にしてみる。



「……なあ。仲間うんぬんはひとまず置いといて、真面目な話、ちと頼みを聞いちゃ貰えないかね?」



 この女にしては珍しく、やや弱いトーンだ。

 

 俺は少し長めの乱雑な黒髪を弄る手を止めた。



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