はぴねすっ!
気の迷いからか、又はこれは!いける!と当時(二年前)の自分がピクシブに上げてしまった作品です。改稿はほぼしていません。
今の作品からかけ離れすぎて、超異次元と化しています。
二志奈々子が突然言い出した。
「ねぇ、竹の花って見たことある?」
夕暮れの日できらきら、と小川が綺麗に反射する。学校からの帰宅途中の土手にて、奈々子が言い出した。
場所が場所でまるで、青春ドラマの一ページのようだ。
奈々子の幼馴染、結城かなえが半分ため息交じりに答えた。
「いや、無理だから」
「それ返答になってないよ?」
「竹の花って何年に一度咲くか知ってるか?」
「昨日咲いた」
「じゃ、タイムスリップしてこい、以上だ」
ダッフルコートに手を突っ込み、かなえが歩み始める。今日は、何にしようか。今晩の夕食の献立を考え始める。
カレーにしようか?カレーは失敗しない、しかし今日は手の込んだ料理を作りたい。
妥当にロールキャベツか?そうだな、案外、あれ難しいからな。
よし、今晩のごはんはロールキャベ
「ちょっと待ってよッ!」
奈々子がいきなり叫びだした。うざったいのか、かなえは眉間にしわを寄せながら、後ろを振り向く。
「鞄から、手ぇ離せ」
「なんで、そんなにひどいのさ!?ちょっとぐらい聞いてくれたっていいじゃない!」
「お前のすることなすこと、今まででマシな事があったか?」
「ない」
「よし、帰ろう」
奈々子はボケで言っただろうが、かなえは巻き込まれたくないが故に、止まっていた脚を動き出そうとする。
奈々子が言い出すことは、いつもろくな事がない。
‘不思議ちゃん’と言われるくらい、突発的な行動と破天荒の発想で周りに迷惑をかけている。
しかし、彼女自身学校では可愛いランキング、上位5位にはランクインしているので、粗方のことは許されるのだが。
‘にーなだからしょうがない’、まるで彼女の為にあったかのような言葉だ。
「………、かなえ。ちなみに竹って何年に一度なの?」
マフラーに顔半分を入れている奈々子は、控えめ気味に言った。
「たしか、千年に一度だった気がする。」
「え……、マジ?」
「こんな事で嘘ついても仕方ないだろ?竹が枯れる寸前に花が咲くそうだよ。空前の灯、って言葉が似合うな」
かなえらしい笑い方で、答える。
一方、茫然とその場に立ち尽くす奈々子。かなりショックだったみたいだ。
「なんだよ?結構ショックか?あきらめることだな、本当に無理に等しいから」
と、言った瞬間、ヤバ………とかなえは思った。瞬時に彼女は幼馴染の方を見る。
長年付き合っていると分かるのだ、奈々子が何を言って、何で反応し、何で行動し始めるのか?
やばいやばい、と思っていてもポロッ、と口からこぼれてしまう。それがかなえの、奈々子に対する弱点だった。
まるで何かを面白いものを見つけた子供のように、奈々子は輝いた笑顔でかなえの方を見た。
「そんなに時間がかかる花、すっごく見たい!たしか、かなえの家の近くの山に竹林が会ったよね?」
南無参、いやかなえが今やっているのはアーメンか。
未来の自分に懺悔し、奈々子の言うことに従うしか他なかった。
奈々子は言い出すと、自分が納得するまで追求するめんどくさい性格の持ち主だ。
昔から、かなえはそれで苦しまされてきた。しかし、目標とする物を達成した時の奈々子の顔を見ると、こっちまで奈々子と同じ気持ちになってしまう。それが続き、今では腐れ縁の幼馴染となっている。
喧嘩もしたし、殴りあったり、罵倒し合ったりした。
絶交も数えきれない程したし、その後の後悔も何度も繰り返した。
怪我もさせられたし、本当に色んなことがあった。
だけど、良いこともあった。
笑って、泣いて、謝って、仲直りして。様々な、彼女たちにとって良い経験となった。
だから、奈々子とかなえは切っても切れない二人になった。
そして、彼女たちは小指に‘赤い糸’を指輪のようにして、付けている。
「よぉし!着いたぞ~~~」
土手からかなえの家まで徒歩10分。そこから徒歩で30分歩いて、‘馬刑山’と呼ばれる山がある。
見た目は普通の山と変わらないが、江戸時代、馬を殺した罪人をこの山の麓の牢屋に投獄させる、そのような場所があった。そこは冬場になると、氷点下になるところで死刑当然の場所と化する。
という噂があるため、あまり人は来ない。
そこの山道(人が歩いた道がある)を少し歩いたところに竹林が存在する。
なぜ、奈々子が知っているかはかなえには謎だが、ともかく簡単には帰らせてもらえないようだ。
「さっそく探そう!」
フンッ!と、鼻息を荒くする奈々子と対照的に、本当に嫌そうな顔で竹林を見るかなえの姿がいた。
竹林と言っても、そこまで広くなく、せいぜい100mぐらいで小さい。
しかし、季節は真冬。したがって、早い時間に日が落ちる。故に長時間の探索は危険を伴う。いくら地元とはいえ、山には入ったことがない奈々子。これは早めに切り上げる必要がある。
「おい、奈々子」
「ん?なに?」
「いつ頃、帰るんだ?」
「見つけたら帰るよぉ~~」
「それだと私たちは白骨化してるぞ?」
「なんか神秘的だねあいだぁ!」
悠長すぎる彼女の意見にかなえは腹を立て、チョップを頭に繰り出す。
「うぅ~~~、冗談だってばぁ………」
「ほら、さっさと探すぞ。タイムミリットは18時までな」
「う、うん」
頭をさすりながら、奈々子はかなえの後を追って竹林の中へと入っていく。
「あぁ、もうなんでないの………!?」
竹林の中でへたれこむ女子高生の姿があった。タイムミリットの18時はとっくに過ぎており、辺りは真っ暗の世界となっていた。吐く息は白く、ダッフルコートを着ているかなえでさえ、寒さでプルプルと震えていた。
しかし、奈々子は折れなかった。もう10分、後30分だけ、とずるずると時間を延ばしに延ばした。
結果、20時を経過する時刻まで達していた。
「もうないって、ほら帰るよ」
「やだ!絶対見つけるまで帰らないっ!」
「そんな駄々っ子みたいなこと言ってないで、ほら」
へたりこんだ奈々子を立たせようと、かなえは手を伸ばす。しかし、その手を奈々子ははたいてしまった。
「ちょっ」
「帰るんだったら、一人で帰って!」
「アンタ一人、置いて帰れるわけないでしょ!?」
「うっさいなぁ!なに?かなえは私のお母さん!?」
「いきなり逆切れとかマジうぜぇし!?」
「はぁ!?キレてないけど!かなえの方がキレてんじゃないの?」
「なんでアンタなんかに切れなくちゃいけないの?バカじゃないの?」
「バカはこっちの台詞だ!このキツネ目!」
「アンタは○○○○○だよ!」
「マジうっざ!知ったかもいいとこだね!」
短気は損気、偶然にも彼女たちはそんなことを思った。
簡単に言えば、デート感覚で来ているものだ。だから、かなえは気軽ではないにしろ、奈々子に従った。
そして、結果がこれだった。たまにそうなのだ。デートに行けば、喧嘩する。本当は嫌なのに。
結局は仲直りするのだが。
数多な罵倒の中で彼女たちは「ごめんね」と、呟き合う。馬が合わないわけじゃない。なぜか、こうなってしまう。
昔からの習慣があるのだろう。きっと、そうでなきゃ私たちの中が途切れてしまう。嫌だけど、その話がなかなかできない。出来たとしても、だ。その先、何があるかわからない。
習慣付けたことはすぐには、やめることができない。
「あぁ、もういい!私帰る!」
「どうぞ、ご勝手に!?」
二人の心は、謝罪と罪悪感がたまっていた。どうしても謝れない。
いつもみたいに、時間が経過すれば仲直りできる。しかし、今回はいつもと違った。
くるり、と振り向き、速足でその場を去るかなえ。
かなえが見えなくなった瞬間、奈々子はかすかに涙がこぼれた。
なんで、いつもこうなるんだろう、と。
自分が悪いのはわかる。わかっているのに、だ。体が脳が、勝手に話し行動する。
鼻をすすり、立つ。いつまで座っても仕方ない。花を探すか、そう思った瞬間、
「ここ、どこ?」
奈々子の周りは一寸も見えない闇。闇、闇、闇、闇。真っ暗という甘い表現ではない。
本当の闇だ。月明かりは高い木や竹で覆われ、そこから風の音が恐怖心を狩出す。
かなえがいた時は、こんなにも暗かったのか?
「そうだ、携帯のライト……」
取り出すも、バッテリー切れ。昨日、充電し忘れていた。
「ど、どうしよう……。帰れなくなっちゃった………」
行こうにもどこへ進めばいいのかわからない。ここの竹林、実は斜径ではなく平坦なのだ。なので、どちらに行くとしても、迷う。もし、出て反対方向だったら朝方まで帰れない、そんな可能性がでてきた。
「かなえぇ………」
か細く、弱々しい声をだしても助けには来ない。
かなえは今いる方向が大体把握できるため、すぐに下山できるだろう。
しかし、夢中になって竹の花を探していた奈々子は、どっちから来たのかわからない。
奈々子の目から涙が零れ落ちた。あふれ出る感情が涙となって、今表現できないことを涙でする。
かなえ、と叫びたい。しかし、助けに来る保証はない。わかるのだ、奈々子も。
長年、付き合っていてすぐには駆け付けないことぐらい。
どうしよう、どうしたらいいかなぁ………?心の中でそうつぶやく。
あふれ出る涙はそう簡単には収まらない。目の前がかすんで見える。
そう思った瞬間、
かなえの声が聞こえた。
「か、かなえ?」
しかし、彼女の姿、ライトの光はなかった。周囲を見渡しても、それはなかった。
幻聴かなぁ?そう思った瞬間、風がそよそよと流れた。それと一緒にかすかに梅の花の匂いが奈々子を鼻腔をくすぐった。
「こっちからだ………」
断言とまでは言えないが、奈々子は風が流れた方向に脚を進める。
ゆっくりと、確実に足元が見えないため、少しずつ少しずつ。
歩いて、15分ぐらいか。
月に照らされた白い花の梅の木が奈々子を迎え受けてくれた。
「ほわぁ………」
思わず、彼女は感嘆の吐息を吐いた。
幻想的なのだ、梅の木が。桜をライトアップしたような、しかも梅の周りは透明な水が月光を反射し、上から下からライトアップされているのだ。そんな期待に梅は答えるかのように、輝く。白い花が満開だ。
「そ、そうだ。かなえは?」
見惚れていてもいいのだが、それだとかなえは見つからない。周囲を見ると、目が合った。
「なんでここにいるの?」
かなえが言った。座れそうな場所を二人で探して座り、気まずい沈黙の中、かなえがようやく口を開いた。
「かなえの声がしたから」
「何それ?」
「だって、本当なんだもん」
「奈々子らしいよ……」
謝るタイミングは今だ。かなえはそう思った瞬間、
「もうわがまま、言わないね?」
「どうしたの、急に?」
「今回は完全に私のせいじゃん?だから」
「…………。そっか」
「奈々子、目、つぶって」
「え、なん」
「いいから早く」
「う、うん」
チュッ
「ッ!?」
「ごめんねと一歩大人になった、ご褒美」
「………、んもう」
「あはは、ごめんね」
「今日のごはん、何?」
「………、ロールキャベツだよ?」
「うん、楽しみにしてる」
そうして、二人の時間は過ぎていった。
如何だったでしょうか?気が向いたら、また書きます。
ノートを見て。