記録20 我慢
新たな登場人物なし。
「トイレだけはすませとけよ。」勇輝が言う。
何人かはトイレにいったが、他は残った。
「それで、何なんですか?我慢することって?」直也が聞く。
「それはお楽しみにしとけ。」勇輝が言う。
女子の数人がトイレを済ませて戻ってくる。
結局ここでの収穫は、木製のバット3本、自販機に売ってたカロリーメイト数個、缶ジュースなどを頂いただけだった。
「皆、車に乗りましょう。」遥が言う。
「何で俺はここなんですか!」直也がワゴン車の後ろのトランクで市民体育館から頂いたジュースや食料の入った段ボールの横で文句を言う。
「だから、我慢することがそれなんだって。」勇輝が言う。
「トホホ……」直也は反論する気にもなれない。
時間はもはや3時30分を過ぎそうであった。
「ゆーくん、急がないと暗くなるよ。」幸子が徐っ席で言う。
「そんなことは分かってる。」勇輝が言う。
「それなら良いんだけど。」幸子が言う。
車は市民体育館を後にする。
車は堀内交差点にさしかかる。
ここら辺にはガソリンスタンド、食料品店、スポーツショップ、リサイクルショップがあり、明倫高校の生徒はかなり立ち寄っていた。
交差点を右折する。
そして、住宅街を進む。
ドン
ゾンビが車に当たる度に智美が小さく体をビクつかせる。
そして、事故車両や、放置車両を避けるために車が揺れると、後ろから
「いてっ。」直也の声が聞こえる。
そうしながらも、車は消防署付近の本町5丁目交差点に来た。
「曲がるぞ。」勇輝は交差点を左折する。
ゴトゴト
段ボールが倒れる音がする。
「痛い!」直也が言う。
誰も反応しない。
「……。」直也は少しだけ痛がった自分が恥ずかしくなった。
今度は、野々市小学校が見えてくる。
キキッ
勇輝が車を止めた。
「何で止めたの?」夏海が聞く。
「前、見れば分かるぞ。」勇輝が言う。
夏海が前を見ると、そこには、小学生らしきゾンビが道にウヨウヨとさ迷っていた。
「あんなの無理矢理いったら、横転しちまう。」勇輝はその場でUターンをして、引き返す。
そして、本町5丁目交差点にまた来る。
「直進しとけばよかったね。」七奈美が嫌みみたいに言う。
「そうですね。」智美が乗っかる。
「ここで降ろすぞ。」勇輝が言う。
車は進む。
しばらく進むと異様な光景を見て、車を止めた。
それは、道の真ん中に黒いワンボックスカーが横倒しになって止まっていたのだ。それならまだしも、その周りには、白い防護服に身を包んだ人達が倒れているからだ。さらにその周りには、ゾンビが何体も倒れている。
「何あれ?」夏海が言う。
「ちょっと……動かないでよ。後ろはただでさえ狭いのに……」七奈美が言う。
「さぁな?確認してみるか。」勇輝はシートベルトを外す。
「行くの?」幸子が言う。
「とにかく、全員降りてくれ。調べてるときに防護服着たやつらがゾンビになったら嫌だしな。」勇輝が言う。
全員車からおりる。
そして、恐る恐る防護服を着たやつらに向かっていく。
ゾンビもののはずが、ゾンビがあまり出てこない。
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