記録18 生還
藤林 幸子(ふじばやし ゆきこ)
石川県立野々市明倫高等学校 1年1組 普通科
部活 剣道部
身長164㎝ 体重55㎏
勇輝とキールから付き合っており、勇輝の事を「ゆーくん」と呼んでいる。
剣道部は高校から始めたので上手いとは言えない。
休日は勇輝の家か、幸子の家、それか、ウィンドウショッピングを楽しんでいる。
母子家庭で、父親は中学3年の時に交通事故で亡くなっている。
岡本 夏海(おかもと なつみ)
石川県立野々市明倫高等学校 1年2組 普通科
部活 美術部
身長170㎝ 体重64㎏
絵画コンクールで入賞するほどの実力を持っている。
特にクラスでは目立たない存在だが、幸子とたまに遊ぶ。
料理上手。
今回の異変の時に、母親から「貴方だけでも生き残りなさい。」というメールが来てからは父親、兄、母親とは音信不通となっている。
車は野々市明倫高等学校に向かって走る。
「そう言えば、彼女はそこにいるの?」遥が聞く。
「知らねぇよ。」勇輝が言う。
「………え?」遥が言う。
「でもあいつもキールに参加していたんだ、こんな時どうすれば良いかぐらい分かってると信じたい。」勇輝が言う。
「そっか……」遥が言う。
車のワイパーは忙しなく動くが、雨がヒビの入っているところから少しだけ入ってきている。
目の前に野々市市民野球場が見える。
「ここを曲がれば着くぞ。」勇輝はそう言うと、明倫高校南交差点を右折する。
「ここら辺も案外ゾンビ居ないね。」七奈美が言う。
「でも、油断は出来ないわよ。」遥が言う。
勇輝があることに気がつく。
「なんか火の手が上がってないか?」勇輝は明倫高校を見て言う。
明倫高校の4階が完全に火の海となっていた。
「急ごう。」勇輝は少し急ぐ。
(頼むから生きててくれ。)勇輝はそう願っていた。
明倫高等学校の正面に来る。
明倫高校は予想を上回るほど酷い有り様だった。
敷地内には学生服を着たゾンビがなん十体もうろついており、逃げ出そうとして喰われたのか、ゾンビが一体の死体に群がっていることも確認できた。
七奈美は口に手を当てる。
「何回見ても馴れない……」七奈美が言う。
「……嘘だろ……」一番ショックだったのは勇輝だった。
勇輝はシートベルトを外す。
「何する気?」七奈美が聞く。
「幸子を探しに行く。」勇輝はそう言うとドアを開けようとする。
「待って!そんなのは自殺行為よ!」遥が止める。
「じゃあどうすれば良いんだよ!」勇輝が怒る。
「電話するとか考えればあるじゃない!」遥が言う。
勇輝は携帯電話を取り出してすぐに電話を掛けた。
プルルルルル
少し待ったが、電話は繋がった。
『もしもし?』その声は幸子だった。
「幸子か?」勇輝が言う。
『そうだけど…ゆーくん?』幸子が言う。
「今どこにいる?」勇輝が聞く。
『今、明倫の前の市民体育館の事務所にいるの。』幸子が言う。
「分かった。すぐに行くから待ってろ。」勇輝は言う。
『うん。絶対に来てよ。』幸子が言う。
勇輝は電話を切る。
「どこに居るって?」七奈美が聞く。
「目の前の市民体育館。」勇輝が言う。
勇輝は市民体育館の正面に車を止めた。
案外雨の音で音がかき消されているのかゾンビはこちらによってこない。
むしろ、燃え盛っている明倫高等学校に向かっている。
「今のうちに行くぞ。」勇輝は車を降りる。
勇輝達は市民体育館にむかった。
市民体育館にはゾンビは全くといって良いほどいない。
勇輝は金属バット、七奈美は車に隠していた伸縮式の警棒、遥は素手だった。
勇輝達は建物内にはいると、すぐに市民体育館の玄関横の事務所に向かう。
勇輝が真っ先に事務所に入る。
「大丈夫か?」勇輝は言う。
七奈美と遥も事務所に入る。
するとそこには、幸子ともう一人の女子がいた。
「……岡本?」勇輝が言う。
夏海は立ち上がり
「久しぶり!」と片手を挙げて言う。
「何で一緒にいるんだよ。」勇輝が言う。
「逃げるときに一緒になったから。」幸子が言う。
「そうですか。」勇輝が言う。
「ところで、その二人は誰?」今度は幸子が聞く。
「お前と同じで高校から逃げるときに会ったんだよ。」勇輝が言う。
「ゆーくんの彼女です。」幸子が簡単には挨拶を七奈美と遥にする。
「よろしく。」七奈美が言う。
「どうも。」遥が言う。
「幸子、お前一日どこで過ごしたんだ?」勇輝が椅子に座って言う。
市民体育館は今は入り口の鍵は閉められてそう簡単には入れなくなっている。
「ここだけど。この異変が起きてしばらくは体育館にいようと思ったんだけど、男子が一人の女子に手を出しちゃって夏海と逃げ出して、誰も居なかったここに来たって訳。」幸子が簡単に説明する。
勇輝も同じくここまでの経緯を簡単に話した。
「お互いにご苦労様だったんだね。」夏海が言う。
「両親は?」遥が聞く。
「私は母が出張で大丈夫だったけど…」幸子が言う。
横では夏海がうつむいている。
「ごめんなさい。」遥が謝る。
「別に良いの。仕方ないって言えばそれで終わるんだから。」夏海が言う。
しばらくの間無言の状態が続く。
先に口を開いたのは勇輝だった。
「これからどこに向かうんだ?」勇輝が言う。
「田中の家で良くない?」七奈美が言う。
「……夏海の家って何処だ?」勇輝が聞く。
「新庄の方だけど、今は火災が酷いってニュースが……」夏海が言う。
「そうだったのか……一応今日の朝通ったけど火事なんて起きてなかったけな。」勇輝が言う。
「そうなると……一番近いのは俺になるのか……」勇輝が言う。
「それならそうと早く行こうよ。暗くなると危険だし、雨も止んだし。」幸子が言う。
「そうね。簡単に武器を手にいれてから車で行きましょうか。」遥が言う。
「準備始めるか。」そう言って勇輝は立ち上がった。
あれ?ハーレムが出来上がっている。
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