記録14 給油
新たな登場人物なし
勇輝達が乗ったワゴン車は、鶴来街道を走っており、まもなく山側環状線と鶴来街道が交差する新庄交差点まで来るところだ。
「ゾンビが多くなってきたな。」勇輝はそう言いながら、道の真ん中をフラフラ歩いているゾンビを撥ね飛ばす。
新庄交差点周辺のコンビニの駐車場に勇輝はワゴン車を止める。
「どうしてここで止めるの?」七奈美が聞く。
「今まで気がつかなかったんだが、この車、ガソリンがもうちょっとしかない。」勇輝が言う。
「え!?それって不味いんじゃない?」七奈美が言う。
「だから、ガソリンスタンドここら辺に無いか?」勇輝が聞く。
「だったら鶴来街道をちょっと進めばガソリンスタンドはあるよ。」遥が言う。
勇輝は鶴来街道を見てため息をついた。
「事故車両が多すぎだし、道もそんなに広くはない。無理だな。」勇輝が言う。
「それなら新庄イオンの近くになかった?」七奈美が言う。
「あー、あそこね。」遥が言う。
「それなら俺でも分かるぞ。ホームセンタームサシの所だろ。」勇輝が言う。
「それならそうと、早く行こう。ゾンビが群がってきているから。」七奈美が言う。
勇輝達が乗ったワゴン車の近くには先程まで居なかったゾンビがいた。
コンビニからも数体自動ドアからゾンビが出てくる。
「それじゃあ行くぞ。」勇輝は車を走らせた。
山側環状線には事故車両や放置車両があったが、道が広いお陰で難なく進めている。
車の影から出てくるゾンビも完全にスルーされている。
車は新庄二丁目交差点を曲がる。
ここら辺は、ホームセンター、スーパー、イオン、スポーツショップ、果てには、ペット専門店まである。それらを合わせると、かなりの広さとなる。
ガソリンスタンドはその中央にある。
スーパーには、慌てて逃げようとしてアクセルとブレーキを踏み間違えたのか、店に車が突っ込んでいた。
イオンの駐車場にはゾンビ何体もうろついていた。
「つきました。」勇輝が言う。
ガソリンスタンドには給油中で逃げたのか、給油ノズルが刺さったままの車が一台放置されていた。
「俺が給油するんで、周りを守ってください。」勇輝が言う。
「何でよ!?」七奈美が言う。
「それじゃぁ給油するか?」勇輝が言う。
「うっ………」七奈美は反論ができなかった。
勇輝はガソリンスタンドに車を入れる。
周りのゾンビはそこまで近くにはいないが、ヨロヨロと勇輝達の元へと向かっている。
「それじゃあお願いしますね。」勇輝が言う。
七奈美が手を差し出す。
「?」勇輝はなんのことかさっぱり分からない。
「銃ちょうだい。」七奈美が言う。
勇輝は無言でガソリンスタンドの柱を指差す。
そこには赤いプレートに「火気厳禁」と書いてあった。
「ちぇっ。」七奈美はそう言うと、徐っ席に置いてあった、金属バットを持って外に出た。そのあとに続いて、遥も外に出る。
勇輝も外に出る。
すぐに勇輝は給油を始めようとしたが、
「あ!」勇輝が言う。
「どうしたの?」まだ近くにいた七奈美が言う。
「ここセルフ式で、現金前払いじゃん。」勇輝は手を出す。
「ハイハイ。」七奈美はその意味をすぐに理解して、ポケットから財布を取りだし、勇輝に投げる。
「サンキュー。」勇輝は七奈美の財布を開ける。
遥は近くに迫ったゾンビに回し蹴りをしていた。
「おいコラ!」勇輝が言う。
「どうしたの?」七奈美が言う。
「どうしたもこうしたもねぇよ!300円で給油出来ねぇだろうが!」勇輝は七奈美の財布を投げて返す。
「事務所から持ってくる。だから、頑張れ!」勇輝はガソリンスタンドの事務所に走っていった。
「小鳥遊さん!早く手伝って!」遥が回し蹴りをゾンビに食らわせて言う。
「あ、はい!」七奈美はすぐさま、近くのゾンビにバットを降り下ろした。
グシャ
頭が陥没する。
「イヤーな感触……」七奈美は次のゾンビにバットを降り下ろした。
グシャ
地面に力なく倒れる。
「今から給油する。」勇輝が手に一万円札を何枚も持っている。
「窃盗……」遥が言う。
「そんなことはどうでも良いですから!」勇輝はすぐに給油を始める。
七奈美と遥はすでにゾンビをあらかた倒してしまった。
しばらくして給油が終わる。
「釣りなら要らねぇ。」勇輝はそう言いながら、お札の投入口に一万円を入れながら言う。
「行こう。」七奈美が言う。
「今行く。」勇輝は運転席に座る。
遥と七奈美も乗り込む。
車はゆっくりと進みだした。
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