第3話 準備
夜の野原でまたも首都「レイサ」に向けての援軍が動いていた。日はもう西の空にとっくの昔にくれており、隊長らしき人物が大声を張り上げた。
「全軍、停止。今日はここで野宿とする。」
と。すると、その部下らしき人物が近くに駆け寄って、
「シャスガ隊長、王からの文が届きました。」
と言った。シャスガは頭の中に真っ先にはてなマークが浮かんだ。
いまさら何か伝えることがる?
それは何だ?
いくら考えても答えは見つからなかったのでシャスガは手紙を受け取った。
それにはこう書いてあった。
遥か王国の北の王、ベルガー・サイオウド・レスンより、現在レイサに向かっているシャスガに告ぐ。この文を受け取ったら直ちに軍の速度を速めるよう。また、相手は魔器使いであることが判明した。軍の速度を速めるとともに戦力増強を頼む。
シャスガはこれを読んで、方針を変えた。すぐに部下であるアムナを呼んだ。
「おい、アムナ。もう少し進めるようにとベルガー様からの伝言が来た。野宿の準備をしていると思うがもうすこし歩く。」
「はい、シャスガ様。」
と言ってアムナは暗闇の中へと消えた。シャスガの中には深い疑問が残っていた。あと、15時間ほど歩けば首都「レイサ」には着く予定だ。そこまで焦る必要があるだろうか?それに、相手にやられた方がこの国のためになるとも考える。なぜなら、この国の方針はすでに腐りきっているからだ。シャスガはここまでして贅沢をしようとは思わなかった。
が、命令は命令だ。従うしかない。
そう言ってシャスガとその軍はもう2時間ほど歩いたのだった。
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その時、キルは・・・。
「おい、こんなんで大丈夫か?」
と不意にフォーが聞いた。城の周りは数え切れぬほどの兵士が囲めるだけ囲み、王は絶対に負けないとその思いを露わにした。が、キルは全然余裕そうに大きく構えていた。
「大丈夫だ。」
とキルは言うが、リンゴを食べながらのその発言では少しも説得力がなかった。
「どっからその自信が・・・。」
とフォーが呟くとキルに聞こえたみたいでキルは反論した。
「大丈夫だって。おそらくここの兵士は大半が王をよく思っていない。それは目で分かる。あれは好きでやってる目じゃない。あれはやらされている目だ。」
「・・・。」
とフォーは反応できなかった。
「だから、少し揺さぶれば簡単に崩れる。相手が巨人でも足元をすくわれたらどうしようもできない。ならばそこを狙うべきだな。」
「なるほど・・・。」
「ってことで、そろそろあいつが戻って来るころだな。」
とキルが言った直後にシックが戻ってきた。
「シャスガがここに向かっている。あと12から13時間で着く所まで来ている。」
「ふん・・・。なるほどね。で、場所は分かるんだろうな?」
シックは勿論だといわんばかりに胸を張った。
「どうする気ですか?」
とフォーが聞いた。この質問にキルは口を静かに口を開いた。
「偽の手紙を王の名前で送りつける!」
と。
次回予告
次回、偽の手紙がシャスガの心を揺さぶる!?
その時、シャスガの出す結論は裏切りか、それとも王に着くか!?
隊長の器が試される。
さらにあらたな魔器使いが!?
次回第4話は、4月5日(火)投稿!