表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結婚しておいてと姉が手紙を残して家出した  作者: みみぢあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/14

8話 デントン家


 先代伯爵様に結婚の許可をもらったあと。


 話し合いをするなら早い方が良いと、私とクロード様はさっそくソールズ伯爵家の隣家で私の家。

 デントン家へいくことにした。



 私たちを玄関で出迎えた執事に、両親がどこにいるかをたずねると──


「旦那様と奥様は居間にいらっしゃいます」

「そう。それでお姉様は見つかったの?」


「はい、ビオレータお嬢様。マグノリアお嬢様は今朝早くに戻られ、今はご両親とおられます」


「……お姉様には呆れたわね」

(本当になんて人騒がせな人かしら)


 この複雑な状況の原因を作ったお姉様に、さすがに今日ばかりは笑っていられない。

 私は執事の前でイライラとする気持ちを隠せなかった。


 そんな私の背中をクロード様はなだめるようにトンッ、トンッ、とたたく。


「ビオレータ?」


「ごめんなさい、クロード様」

(お姉様も私自身もたくさん迷惑をかけて)


 姉妹そろってクロード様に迷惑をかけたことを謝った。本当にいくら謝っても足りないぐらいだ。


「うん。もう怒っていないと言っただろう? 君はこれ以上、謝らなくて良いよ」


「はい」

(これ以上、クロード様に優しくされたらまた泣いてしまいそうだわ)


「それよりもだ…… マグノリアとご両親がそろっているなら、ちょうど良い」

「ええ」


 初夜をともに過ごしたせいか、私とクロード様に不思議と一体感が生まれていた。


 淑女教育を受け始めたころからクロード様に引かれていた境界線が崩れ、グンッ…… と気持ちが近づいた気がする。


 嬉しいと喜びたいところだけど。クロード様がこれから解決しなければいけない苦難を想像すると、とても無邪気に喜べない。


(私がもっとしっかりして、クロード様をささえないと!)



「さてと、ビオレータ。家出娘の説教に行こうか」

「はい、クロード様」


 差し出された手を取り、私はクロード様のエスコートで我が家の居間へ向かう。



 先導した執事が扉を開き私たちが居間へ入ると……

 お姉様がティーカップを持つ手の小指を立てて、優雅にお茶を飲んでいた。


 不機嫌そうな顔をしているのを見ると、お姉様はすでに両親から散々説教をされたあとなのだろう。

 お姉様は私たちに気づくと、自分の悪戯(いたずら)が成功したのが嬉しいのかニヤニヤと笑った。


「あら、来たのねクロード。ビオレータも。二人ともずいぶん来るのが遅かったわね?」

「お姉様…っ…!」


 お姉様の言い方に怒りが込みあげてきた。今にも癇癪(かんしゃく)を爆発させそうなったけど、ギリギリと奥歯を食いしばり自分を抑えた。


 クロード様はそんなお姉様を無視して、私の両親に向って丁寧にあいさつをした。


「オルランド卿、デントン夫人、おくつろぎのところをお邪魔して申し訳ありません。昨日の結婚式のことで、いくつか問題がおきましてご相談に参りました」


 お父様は顔を真っ青にしてソファから立ち上がる。お母様もお父様と一緒に立ち、顔を強張らせている。


「ああ、クロード卿! こ… こちらこそ申し訳ない。そ…その、もっと早くマグノリアが見つかると…思いまして…その……」


 真っ青だった顔色が真っ赤になり気の小さなお父様はこの事態に、今にも倒れそうなほど動揺している。


「クロード様… 座りましょう?」

「ああ、そうだね」


 私はクロード様の手をひき、両親の向かいがわに並んで腰をおろした。お姉様は斜め横の一人がけのソファに座っている。


「……それで、お姉様はどこにいたのですか?」


「屋根裏部屋にいたわ。ふふふっ…… 上手く隠れたでしょう? 窓から客間を抜け出したから、みんな外ばかり探していたけど。使用人用の階段を使って上がったの」



 こんな大胆なことを簡単にできるお姉様が、(うらや)ましいと思っていたけれど。得意げに話す姿にはうんざりした。

 時と場合を選ばなかったお姉様に、今は嫌悪感さえ感じる。


「マグノリア…… 君は自分が何をしたか、わかっているのか?」

「なによ、クロード。あなたがいけないのよ?」


「君がどれだけビオレータに迷惑をかけたか、理解しているのかを僕は聞いているんだ」


 怒鳴り散らしてもおかしくないところなのに。クロード様は紳士らしく、とても穏やかな声でお姉様にたずねた。


 隣にいた私はクロード様の顔を見て、ブルッ… と震えあがった。


「……っ!」

(顔はほほ笑んでいるけれど…)


 すぐ近くにいるから良くわかる。クロードの瞳が、ものすごく冷たい氷の刃のように光っている。少しも笑っているようには見えない。


 さすがにクロード様の怒りをお姉様も感じ取れたらしい。


「そ、それは…… 優しいビオレータなら許してくれるわよ! ね? ビオレータ、そうでしょう?」


 顔を強張らせて、助けを求めるように私を見るけど。


「マグノリアお姉様……」

(お姉様、ダメよ。激怒しているクロード様に、そんなことを言っては逆効果だわ)


 こんなに怒ったクロード様を見たのは、大人になってから初めてだった。


 『お姉様、素直に謝って』 …と私は首を横にふり、お姉様にサインを送った。


 私の反応を見てお姉様の顔が青ざめた。

 普段なら『仕方ない』と家族だから許されていたけど。私も今日はそんな簡単に許す気にはなれない。


 かん高い声で、お姉様はこの場にいる人たちから同情心を引き出そうと、言いわけをする。

 

「で… でも、悪いのはクロードでしょう? クロードはいつも私に、“婚約者ならビオレータのように礼儀正しくしろ” とか… “ビオレータのように大人になれ” とか… とてもひどいことばかり言うのよ!」


「マグノリア… それは君と違って、ビオレータが立派な淑女だからだよ」


 ハァ───ッ… とクロードは大きなため息をつき、マグノリアを威圧するように、腕組みをしてにらみつけた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ