7話 翌朝2
寝室で朝食をとったあと。
私たちは朝食室でのんびりと食後のお茶を飲んでいた、先代ソールズ伯爵様(クロード様のお父様)に会いに行き。
私が姉の身代わりとなった経緯をクロード様が話した。
──そして私の肩を抱いたクロード様は、私たちが初夜をともに過ごしたことで後戻りできない状況なのだと説明する。
「お前は…… 相手がビオレータ嬢だと気づかなかったのか?」
「はい。僕も昨夜は緊張していましたから」
驚愕の表情を浮かべる先代伯爵様に、クロード様は何の躊躇もなくサラリと言ったけれど。
私はあまりにも恥ずかしくて顔をあげられなかった。
私が『ダメだ』と声をあげてクロード様を受けいれなければ、良いだけの話だったのに。私はそうしないで、喜んで受け入れてしまったから。
「……っ」
(ううっ…… できれば両手で顔を隠したい。何も弁解できないわ!)
ありがたいことに先代伯爵様は恥かしがる私をチラリと見ただけで、私がクロード様を受け入れた理由については触れなかった。
読んでいた新聞を置いて、先代伯爵様はカップに残ったお茶をいっきに飲みほす。
「それにしても困ったものだ。どうりで昨日はマグノリア嬢の印象が、いつもと違うと思ったんだ」
「……っえ⁉」
(顔をベールで隠していたから、完璧にだませていると思っていたのに?)
「ふふっ…」
「……??」
(クロード様はなぜ、笑っているの?)
私が少し驚いていると、隣に立つクロード様から笑い声が聞こえて見あげた。
「それでクロード、これからどうする気だ?」
「僕は結婚式をビオレータとやり直します」
「お前もわかっていると思うが、これは婚約解消などよりもずっと大きな醜聞になるぞ?」
「はい、覚悟しています。ですから両家の土地と縁を結ぶ政略結婚だから、何があってもやめられないと。そういうかたちで押し通そうと思います」
新聞をカサカサとたたみながら、先代伯爵様は難しい顔をする。
「そうか。まぁ、そうするしかないだろうな」
「はい」
「ビオレータ嬢はそれで良いのかね? そうなると、君も醜聞の当事者になってしまう訳だが」
クロード様に向いていた先代伯爵様の視線が私に向く。緊張していた私はいつもより高い声で答えた。
「あ、はい! 私は構いません。このようなことになり、本当に申し訳ありませんでした」
私よりも伯爵家の当主のクロード様のほうが、醜聞でもっと苦労することになるのだから。いつまでも私だけぼんやりと落ち込んでいられない。
「父上が決めて下さったマグノリア嬢との縁談を壊すことになり、申し訳ありませんでした」
クロード様が先代伯爵様に頭を下げ、私も一緒に頭を下げた。
「いや、クロード。今はお前がソールズ伯爵家の当主だ。お前がそう決めたのなら、私は反対しないよ」
「ありがとうございます、父上」
「ありがとうございます」
先代伯爵様はどことなくホッとしたようすで、気持ち良く私を義理の娘として受け入れることを承諾してくれた。




