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追放された宮廷料理人ですが、辺境で一日一皿だけ作って生きます  作者: 百花繚乱


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第六話 火を守る者たち

扉の外に立っていたのは、鎧姿の兵士だった。

王城の紋章が、月明かりに鈍く光っている。

「王命だ。レイン・アルド。開けろ」

低い声。命令の響き。

かつて王宮で何度も聞いた声色だった。

レインは一瞬、手を止めた。

だが鍋の火は落とさない。火を見失えば、判断も鈍る。

戸を開ける前に、背後から声がした。

「夜分にすまんが、その“王命”とやら、ここでは少し事情が違う」

村長だった。

いつも穏やかな男が、今夜は背筋を伸ばし、兵士の前に立つ。

「この店は、村の食堂だ。

 この男は、村の料理人だ」

兵士は眉をひそめた。

「王命に逆らうつもりか」

「逆らう気はない。ただ、確認したい」

村長は静かに続ける。

「王命とは、王の命を守るためのものだろう。

 ならば聞こう。

 王は今、健康か?」

兵士は答えられなかった。

それが答えだった。

周囲に、村人が集まり始めていた。

狩人、母親、老人、子どもたち。

誰も武器を持っていない。ただ、そこに立っている。

「この男の料理で、村は守られている」

「病が減った」

「冬を越えられた」

一人ひとりの声は小さい。

だが、重なっていく。

兵士は舌打ちし、後ろへ下がった。

「……明日、改めて使者が来る」

そう言い残し、馬を返す。

扉が閉まった後、

レインは深く息を吐いた。

「……迷惑をかけました」

村長は首を振る。

「火を守る者は、一人じゃない」

その言葉が、胸に残った。

――だが、問題は終わっていない。

王都は、必ず“本命”を寄越す。

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― 新着の感想 ―
武力ではなく、生活の積み重ねで立ち向かう村人たちの姿が印象的でした。誰も剣を持たず、ただ「ここに立つ」だけで示す抵抗が、とても強い。 「火を守る者は一人じゃない」という言葉が胸に残ります。 主人公が孤…
意と噂が暴走するときの怖さが丁寧に描かれています。 奇跡を期待されることが、どれほど危険かを料理で語る構成が秀逸です。
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