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追放された宮廷料理人ですが、辺境で一日一皿だけ作って生きます  作者: 百花繚乱


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第二話 届く量、届かない想い

鍋に入れたのは、骨から丁寧に取った澄んだ出汁と、細かく刻んだ根菜。

香辛料は使わない。

刺激は、今はいらない。

「量は少ないです」

「構いません」

客は、匙を取る前に一度、深く息を吸った。

「……匂いが、やさしい」

一口。

そして、しばらく間を置いて、もう一口。

食べている、というより“通している”に近い。

だが確かに、拒絶はしていない。

「……久しぶりです」

「食べることが、こんなに静かだったのは」

その言葉に、レインは何も返さなかった。

料理が、すでに返している。

翌日、客は再び現れた。

だがその日は、別の問題が起きる。

「今日は、子どもに出してほしい」

母親が頭を下げた。

熱を出しているという。

病を抱えた客と、子ども。

どちらも“正しい”。

食堂の空気が張り詰める。

レインは、悩んだ末に言った。

「今日は……作りません」

怒号が飛ぶ。

「逃げるのか!」

「選べないだけだろう!」

レインは、静かに答えた。

「選べない日もあります」

「それでも、量を増やすことはしません」

その日、誰も食べられなかった。

だが、誰も倒れなかった。

病を抱えた客は、帰り際に言った。

「……それでも、来てよかった」

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― 新着の感想 ―
とても静かで、それでいて苦しい回でした。 「量は少ないです」という一言に、この食堂のすべての覚悟が詰まっていると感じます。 誰に出すかを選ばず、「今日は作らない」という選択をしたことで、 誰も救えなか…
料理を「食べさせる」から「届ける」へと再定義する回。 一日一皿が、哲学として完成する静かなクライマックス。
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