ストレンジャー・オールアウトアタック
やたらと強い敵が来た。
人型の、わかりやすく黒ずくめの敵だ。
今までのような調子でやってきたストレンジャーだが、いつものように集まっただけでは、とても太刀打ちできなかった。
黒ずくめの敵は、ストレンジャーたちを前に言った。
「我が名はブラック・キング!お前ら、やる気あんのかァッ!!」
何故か敵なのに喝を飛ばすブラックキング。
だが、彼らにやる気なんてあるわけがない。
ただでさえ、やる気がない彼らのことだ。
しかも、今日は雨。
ほぼ惰性で出動した奴らだけだった。
「そんなこと言われましても……」
「え?」
「僕ら、雇われだし……」
「今日、雨だし……」
「彼女にフラれたし……」
やる気のなさをまるで隠す気のないストレンジャーたち。
しかも、黒ずくめの敵を相手にしている今回に限って、全員黒スーツである。
「帰れ!」
「帰りまーす」
「本当に帰るやつがあるか!街とか襲うぞ!!」
脅しにかかるブラックキング。
「なんか給料に見合ってない気がする……」
「分かる……」
「分かります……」
「最近、キャベツとか高いし」
「肉も」
「魚も」
もはや、その辺の一般人である。
そんな彼らの様子を、一人遠隔で見ている者がいた。
組織のトップ、田中ヨシノブである。
「街に危害が及ぶと、訴えられるかもしれないしなぁ……」
この男も、まるで正義感のない男だった。
もうダメである。
「仕方ない。あれを使おう」
そう言って、ありがちな丸い赤ボタンを押した。
瞬間、全てのサービス登録者たちに通知が届く。
「総員!今すぐ現場に直行せよ!!報酬として、ボーナス十万を給付する!!」
その話を聞き、ストレンジャーたちは珍しくやる気を起こした。
司令からわずか数分で、公園が戦隊スーツの群れで埋まった。
本来なら圧巻の場面。
でも、彼らは猫背。
走り疲れて肩で息をしている。
だから、子供が見たら泣くぞ。
登録者のスマホから、一斉にヨシノブの声が響く。
「総員、突撃じゃー!」
投げやりである。
数でどうにか出来ると思っている。
やる気がない奴らなので、仕方がないといえばそうではあるが、彼らにはカッコ良さのカケラもなかった。
拳、蹴り、チョップ、野次と精神攻撃、頑張れしか言わない応援、バット、木の枝、ゴルフクラブ、銃器、レーザー、スリッパ!そしてハリセン!!
やっぱり、集団暴行である。
総攻撃ともなれば、アツいシーンなのにこのザマである。
でも、いつもよりやる気はある。
金の力で、やる気になっている。
つくづく、現金な奴らである。
「くっ。今回はここでさらばだ!」
ブラックキング、逃げた。
そりゃ、そうだ。
こんな奴らにやられたくないだろう。
彼のプライドが見えた瞬間であった。
一方、ストレンジャーたちはもみくちゃになっていた。
まだ、戦いが終わったことに気づいていない。
ヨシノブはため息をつく。
「こんな奴らに金払うのか……」
自分で蒔いた種である。
なんだかんだ、今回もストレンジャーたちは勝利したのだ。
それでは、いつものセリフ。
「正義のために、今日も彼らは悪と戦う。頑張れ!ストレンジャー!!!」
ナレーターの私も、給料上がらないかなぁ……




